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そんな事情なら、黙って待っているだけでよかったかもしれなかったのに。相手の心の確かなものが欲しくて、素直に手を伸ばしたのか。
―――俺もそんなふうであれば、違う現在があったんだろうか。
「バカだな」
「ほんと、それな」
秀は気の抜けたように笑って、氷が溶けて薄くなったハイボールを一気に呷る。そこから先は二人で死ぬほど飲んだ。二時間制の居酒屋を追いたてられた後はバーに場所を移して、秀が酔い潰れるまで飲み続けた。
たたき起こした秀に肩を貸しながらバーを出た時には、夜空にぽっかりと浮かんだまんまるい月が、白く輝いていた。
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