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 華奢で控えめで物静か。抜けるように肌が白くて、黒髪のロングストレート。奴の惚気話をさんざん聞かされていた俺が何となくイメージしていたのは、白雪姫のような女の子だった。清純無垢な、庇護されるべき存在。  つまるところそれは秀が彼女のことをそう捉えていたということの証左で、奴はナイトよろしく彼女のセキュリティに気を払い、ついでに虫除けにも余念がなかった。  何しろ俺にすら会わせたくないと言い張るのだから、ちょっと前代未聞の事態だ。  秘密主義と評される俺の恋愛事情について秀に探りを入れにくる女の子の多さが、奴に無駄な警戒心を抱かせているらしい。今更かよ。 「人のもんに手を出すほど、相手に不自由してねえわ」 「わかってるよ。でも嫌なもんは嫌なの!」  貴文の顔が良すぎるのが悪い、と大真面目に理不尽なことを言った後、自分でも可笑しくなったのか笑っていた。 「大体そっちだって会わせてくれたことないじゃん」 「……俺はいいんだよ」 「何でだよ」 「会わせる約束したって、それまで続いてるかわかんないだろ」 「驚きのクズ宣言」  ははは、全くだ。会わせる気がない一番の理由は別にあるが、いつも長続きしないのも事実だった。  奴にここまでさせるのがどんな子なのかと興味はあったが、対面を果たすまでには二人が付き合いだしてから実に半年以上が経過していた。  思っていたのとちょっと違う――それが遠目に彼女を見た最初の感想だった。  同じ大学と言っても、秀と俺では通うキャンパスが違っていて、始終顔を合わせているわけでもない。彼女の学部は秀と同じキャンパスだから、俺が向こうに出向かない限り、学内で二人でいるところにバッタリ出くわすなんてことは起こらない。  だから、その機会が訪れたのはキャンパスの外でのことだった。  人待ち顔で大学近くの駅前に佇む秀を見つけた。ピンと来た俺は、秀から死角になる位置で待機することしばし。予想通り、まもなく一人の女の子が改札から現れ、秀に向かってまっすぐ歩み寄った。黒髪のストレートロング。間違いない。  なんとなく小柄でかわいらしいタイプを想像していたのだが、思ったより背が高くて大人っぽい。華奢というよりすらりとしていて、ロングスカートにざっくりとしたカーディガンのシンプルな服装が、そのスタイルの良さを引き立てていた。
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