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飯島がふとアパートの壁に目をやると、奇妙な場所に血のシミがあった。ずいぶんと高い位置に、足形のようなしみがあった。
「なんであんなところに・・・?」
飯島は思わずつぶやいた。足形であることには間違いないが、飯島の背丈よりも高い位置に、なぜ足形が?
疑問に思う飯島の耳元で声がした。
「振り回したんだろうな。首根っこにかじりついて、猫の子でも振り回すようにな。足があそこにたたきつけられて、骨も砕けただろうよ」
少女の声だった。この場に全く不釣り合いな声色だった。言葉遣いにも全くそぐわない。細くて高い、少女の声だった。
ギョッとして振り返ると、飯島の肩の位置に少女の頭があった。黒い髪を肩口で切りそろえた、恐ろしく色の白い少女だった。
「き、君は? こんなところで何してる?」
飯島巡査の声を完全に無視して、少女はずかずかと現場に侵入した。水色のワンピースに、真っ白なセーラーカラーがついている。スカート丈はひざ下。白いソックスを履いている。いつの時代ともつかない不思議な服装だ。
あっけに取られている飯島には取り合わず、少女は突然床に膝をつき、這いつくばるようにして何かを探しはじめた。
「ちょっと。なにやってるの」
少女を止めようとした飯島刑事は、年上の刑事に制止された。
「いいんだ。許可は得てある」
「許可? 何なんですかあの子は」
「・・・何なんだろうな。非科捜研・・・かな」
「ヒカソウケン?」
「非科学捜査研究所から来た謎の人間。俺も良くは知らん。深入りするな」
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