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大人二人は起きていた。女は手前のダイニングテーブルに肘をつき、こちらに背を向けてスマホをいじっている。男は奥でちびちびとウィスキーを飲んでいた子供の姿に気が付くと怒鳴りつけた。 「どこに行ってたんだ! 勝手に出歩くなと言っただろ」 怒鳴った男の目がまん丸に見開かれた。 「うわぁ!」 男は悲鳴を上げて、こちらに背を向けて逃げようとする。女が悲鳴を聞いて顔をあげた。女の顔は恐怖に引きつり、声も出ないようだった。 何かが子供の頭上を飛び越えた。 虎だった。 巨大な虎が女の顔面に爪を立てる。女は顔を押さえて転げまわった。虎は後ろ足で女を踏みつけると、ベランダの窓から逃げようとしている男に躍りかかり、首筋にかじりついた。 ミシミシッと嫌な音がした。虎はかまわず男の体を振りまわした。人形のようにぶらぶらと空中に揺れる男を見ながら、子供は 『よわい』 と思った。こんなに弱かったんだ。虎は男の体を壁にたたきつけた。男は動かなくなった。女は顔を押さえて泣きわめいている。 「助けて! 助けて!」 女が子供の足首をつかんだ。子供は思わず後ずさりした。 「どうする?」
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