非科学捜査研究所

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本部長は少女の様子を気に留める風もなく、朗らかな口調で言った。 「さて、全員揃ったところで始めよう。飯島君、はぐくみこども園の園長さんとは初対面かな。」 「はい。巡回はさせていただいてますがお会いしたことはありませんでした」 「初めまして、飯島さん。保育士さんからは気さくなお巡りさんだって評判がいいですよ」 園長は、湯婆婆のような眼光とは裏腹に、優しい声であいさつをした。 「ありがとうございます」 「よかったな、飯島君。では森本一課長、状況を説明してくれるかい」 「了解しました」 森本捜査一課長が説明を始めた。 「ことぶき町さいわい荘で男女カップルが失踪した件は、捜索願を提出されておりませんので捜査はいたしません」 「は?」 飯島は思わず立ちあがった。 「失踪? 死体がありましたよね。殺人事件ですよ」 「成人した男女がある日突然なんかの都合で行方をくらますというのはよくあることです。まして消費者金融に多額の負債を抱えているような人物ですから」 「いや・・・・ええ?」 本部長が落ち着いた態度で飯島をなだめた。 「まあ、飯島君座りなさい。幸い昼間だったから、目撃者は隣室の老夫婦だけだった。彼らには引っ越しをしていただいて、アパートは現状回復して一件落着だ」 続いて園長が言った。 「幸い私どもの系列のケアホームに空きがありましたから。そちらに移っていただきました。困窮したお暮しのようでしたし、ご夫婦も安心していらっしゃいます」 もみ消す気だ、と飯島は思った。こんなこと本当にあるんだ。でも、現場にはたくさんの警察官がいた。かぎつけたマスコミもいただろう。 「この事件を外部に漏らそうとした人間には、わしが夢枕にたった。よもやつまらぬことはするまい」 視界から遮断していた少女の声がした。声だけは清らかに澄んでいる。でも・・・ ゆめまくら・・・? 「わしがアホ面で寝ているあやつらの枕元に立って、いらぬことを漏らしたら地獄に堕ちるよりも恐ろしい目に遭わせると告げてやったのだ。みんな震え上がっていたわ」 「ははは。飯島君、そういうことだから心配は何もいらないんだよ。さて、一課長、真相、と言うかここまでわかっていることを飯島君に説明してやってくれ」
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