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「飯島君。この方はその気になったら人間の一人二人、いくらでも召し上がるから。口のきき方に気をつけなさい」
「ふん。シャカと約束したからな。人は喰わん。飯島とやら、安心しろ。話を戻す。人虎は天界と人間界を行き来する存在だとは理解できたか」
「はい。分かりました」
「しかしな。むやみやたらと行き来できるわけではない。『縁(えん)』が必要なんだ」
「『えん』・・・それって『縁結び』とかの『縁』ですか」
「そうだ。分かりが早いな。天界の存在は、人間から求められなければ人間界に顕れることはできん。虎は、自分を求めてくれるものを見つけたのだろう。それが、あの現場から消えた子供だ。虎は子供の願いをかなえるかわりに、子供を使い魔にしたんだ」
「使い魔?」
「そうだ。人虎に食われた人間は虎の使い魔になり、人虎が死ぬまで霊魂は成仏することができないと中国では言われている。だから中国人は虎に食われることを恐れた。ただし人虎もむやみやたらと人間を使い魔にするわけではない。きちんと契約を交わす。使い魔との相性もあるしな。あの虎は、悲しい子供を探している虎だ」
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