非科学捜査研究所

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飯島は、老夫婦の話を思い出した。ひどい虐待をされていて誰も手を差しのべていなかった。虎は、子供をどうしたのだろう。 「あの・・・子供はどうなったんですか? 生きているんですか?」 「肉体は人間界から離れている。神隠しにあった子供が時を経て当時の姿のまま帰ってくる例もあるから、肉体を取り戻せる可能性はゼロではないが、わしは経験がない。魂の救済が最優先だ」 少女はテーブルの上に、飴色のかたまりを取り出した。飯島が砂場で見つけたものだ。 「覚えているか。琥珀(こはく)だ。子供が虎の使い魔になるときに流す涙が琥珀になる」 「・・・琥珀は天然樹脂の化石です」 「人間界の話はしていない。触ってみろ」 飯島は恐る恐る琥珀に触った。柔らかい。グミみたいな手触りだ。 「柔らかいだろう。これが柔らかいうちは、使い魔にまだ人間だったころの意識が残っている。それが次第に人虎に取り込まれて行って、完全に硬化してしまったら虎の一部になってまう。そうなったら琥珀を頼りに追跡することも不可能になる。一課長。この子供には名前がなかったんだな」 「はい。出生届も出ていませんし、隣室の老夫婦も名前で呼ばれていた様子はなかった、と」 「ふん。名まえを持たなかった子供に虎が名づけをしたわけだ。あっという間にとりこまれるぞ。時間がないんだ。分かったか? 質問はあるか?」 いや、何もわかりませんよ。分かろうとする気力もありません、と飯島は心の中でぼやいた。でも何か聞かないと食われそうだな・・・
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