非科学捜査研究所

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非科学捜査研究所

森本は、引きちぎられて肉片と化した死体と消えた少女の行方を説明できなかった。発狂した森本による犯行に仕立て上げられそうになった時、鬼子母が現れた。 「ここで森本に罪をなすり付けたところでまた同じような事件が起きる。いちいち誰かを生贄にするのか? それよりもわしに森本を預けてはくれまいか」 園長もそのころは保育園や老人ホームを経営する地元の有力者になっていた。園長の力添えもあって『非科学捜査研究所』が発足した。 虎を追うのではなく、罠にかけようと提案したのは森本だった。シンが食いつきそうな児童虐待案件をでっち上げて誘い込めばまとめて捕まえられる。 「その発想はなかったな。人間は面白いことを考え付くものだ」 鬼子母は感心していった。当時の鬼子母はリクルートスーツを着ていた。警察やこども園に出入りするのに一番目立たない格好を、と森本がリクエストしたのだが、鬼子母も園長もあまり好みではなかったらしい。 「こんなお洋服を縫うのが一番つまらないわ」 「わしもだ。窮屈なだけ。何が楽しくてこんなものを着ているのか」 「仕事なんて、窮屈なものですから」 森本も、冗談が言えるくらいには二人と打ち解けていた。
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