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「で、策はあるのか?」
鬼子母は森本に聞いた。
「虎に呼ばれる夢を見る、という男が現れました」
「夢?」
「はい。園長先生の話を聞いて、虎の狩りが100%成功しているわけではなさそうだと思いました。だから、雑誌に記事を書いている知り合いに、虐待家庭の親を惨殺する虎の話を都市伝説風に仕上げて夏の怪談シリーズに書いてもらったんです。そうしたら、そのライターに接触してきた男がいまして。彼は親から放置されて餓死寸前まで追い込まれたそうです。そうしたら、『そんな親なんていらないよね』と話しかけてくる少年と出会ったそうです」
「シンダーラか」
「おそらくそうでしょう。彼はいったん、少年に同意した。しかし少年が虎に変身したのを見て怖くなってしまって『お母さんを殺さないで』と懇願した。虎は無言で立ち去った。母親は、酒に酔って夢を見たと思っているらしいです。その後彼は児童養護施設で成長しました。母親との接触もなかったが、最近夢にあの少年が出てきて『お前の母親はまた、同じようなことをしているぞ。お前があの時に始末しなかったからだ』と、恐ろしい顔をして言うのだそうです」
「・・・一度縁ができてしまっているからな。あれは執念深い。その男と連絡は取れるか。」
「はい」
森本は、虎の夢を見るという吉沢隆志を、鬼子母と園長に引き合わせた。
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