非科学捜査研究所

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部屋には母親と小さな男の子が向かい合って座っている。虎は母親に襲い掛かった。母親の体が虎の爪によって切り裂かれた。 「あれ?」 「どういうこと?」 使い魔たちが口々に叫んだ。母親の体は宙に舞い、消えた。代わりに天井近くから落ちてきたのは人形だった。子供の姿も消え、やはり男の子の人形が椅子の上に置かれていた。。 「罠だ!」 使い魔の一人が叫んだ。 慌てて逃げ出そうとするドアの前に、鬼子母が立っていた。 「シンダーラ。久しぶりだな。ずいぶんと荒ぶった姿ではないか」 その言葉に、シンダーラの姿が一瞬幼い子供のように変じた。虎の毛皮を着ぐるみのようにまとった幼児の姿が出現した。 「神将、かかれ!」 吉沢には、部屋中が銀色の網に覆われているのが見えた。それを支えているのは東大寺仁王像のような隆々とした体をした神将たちだった。 「天網を張った。もう逃げられん」 六畳二間の狭いアパートが、無限の広がりを持った空間に変わり、銀色の網をかかげた神将たちが迫ってきた。使い魔たちが悲鳴をあげながら、蜘蛛の巣にからめとられるように天網に巻き取られていく。 「シン、シン、助けて」 使い魔とはいえ子供たちの叫び声は吉沢の胸には悲しく響いた。 虎は一瞬ためらったが、鬼子母に向かって突進した。 「俺を見捨てて神様の仲間入りとは結構な身の上だな。鬼子母神? 笑わせるな。出来の悪い母親をかばうのは、お前に身に覚えがあるからだろうが!!」 鬼子母は明らかにひるんだ。すると、天網の一部に破れ目が入った。虎はそのすきを見逃さずに身を躍らせた。虎の体は天網を突き破り、黒い空間に消えていった。 「・・・取り逃がしたようだな。ハーリティよ、天網は神々の霊力によって張り巡らせている。心を乱せば霊力の均衡が破れて破られる。自明のことだ。何をやっているんだ」 神将の一人が𠮟りつけた。 「・・・面目ない」 鬼子母はうなだれた。無限の空間はいつの間にか元のアパートに戻っていた。 いつの間にか現れた園長と森本は、アパートに散らばった使い魔だったマスコットを回収していた。 園長は言った。 「まあ、収穫はあったでしょう。シンダーラはこの子たちを見捨てたりはしないでしょ。だったら向こうからやってくるわ。追いかけなくてもよくなったわ」 鬼子母は黙ってうなずいた。
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