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琥珀
以上が、森本捜査一課長と鬼子母との縁である。
思いがけなく長い物語に、飯島は呆然としていた。下手をしたら、二千年以上にわたる親子喧嘩じゃないのか。しかも、辛い人生を送った子供たちまで関わってきているなんて。
手を引いてしまいたいとおじけづく気持ちもあった。しかし、飯島は鬼子母に聞いた。
「あの・・・虎は、人間の親を食べて子供を使い魔にすることが目的なんでしょうか」
「ふむ・・・たぶん違うな。シンダーラが連れ去った子供は7000体を優に超える。全員を使い魔にするなど不可能だ」
「では、子供の魂も食べてしまったのでしょうか」
「わしも最初はそう思っていた。しかしそれではつじつまが合わぬのだ。人間の魂には霊力が備わっていて、決して侮れないエネルギーを持っている。7000を超す魂を食らったら天界を揺るがすような大妖魔になるだろう。しかしそんな気配をやつからは感じられない。魂を喰らったわけではないと思う」
「子供たちは、どこに行ったのでしょう」
「それが分からぬのだ。消えた子供たちの魂が天界に届いた様子もない。食われた親たちの魂は地獄に次々と送られてきているのにな。しかも、親の死体は必ず現場に残っておるが、子供の体は髪の毛一つ残ってはおらぬ。おかしいではないか」
「使い魔にしたから、残っていないのでは?」
「いや、使い魔にするのに肉体は不要だ。むしろ抜けがらとしての肉体が残されるべきなのだ。しかし、それがない。
子どもの魂も肉体も、まったくもって行方が分からない。あれがどこかに隠して、何かを企んでおるのだ」
「何を、企んでいるのでしょうか」
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