18人が本棚に入れています
本棚に追加
少女は隣の部屋のドアを、チャイムも鳴らさずにどかどかと叩いた。叩くたびにドアが波打つ。どこにそんな力があるんだ、壊れちまうぞ、思ったときにドアが開いた。細く開いたドアの隙間から、こちらをのぞく目があった。
「入るぞ。聞きたいことがある」
少女は扉をねじあけた。
老婆の姿があった。
「わ、わしらは何も知らん。隣の家とは何の付き合いもなかった。そ、そりゃ物音は聞こえたが、隣の連中が何してようがわしらには関係ない」
「聞いてもないことをべらべらとしゃべるな。わしが聞いたことにだけ答えろ」
わし? 飯島の頭には??マークがついた。何だこの娘。しかし少女には有無を言わせない迫力があった。老人二人はごくりとつばを飲み込んで、少女の質問を待った。
「子供がいたな」
老人たちはうなずいた。
「どこにいた? 家以外でだ」
「・・・家、以外?・・・」
老婆がおずおずと答えた
「あの。。。親は部屋から出さないようにしていたようですが、親たちが酔いつぶれているときなど、、あそこの公園に一人でいました。いえ、可哀そうだとは思ったんです、でもうちにも余裕なんてないし、こんな年寄りが歯向かったって・・・」
老婆は茶色のシミにまみれたエプロンを握りしめた。何日も着替えてないのだろう。すえたにおいがした。さっきまで強烈な死臭をかいでいた飯島の鼻にも伝わってくる、不潔なにおいだった。
最初のコメントを投稿しよう!