琥珀

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琥珀の砂は、鈍い飴色の輝きを帯びている。手ですくったら指の隙間からさらさらと光りながら滑り落ちていくだろう。あくまでも無機質の美しさだ。しかしテーブルに並べられた6個の琥珀には生命が宿っている。特にリウ(六)の琥珀はみずみずしく脈動脈動している。 『僕に触って・・・』 飯島にはそんな声が聞こえてきそうだった。 「あの・・・琥珀に触ってみてもいいですか?」 「ああ、かまわんぞ。使い魔が人間だった証だ。触れてやってくれ」 飯島はリウの琥珀を手のひらにのせた。 途端に。 飯島の胸を強烈な感情が貫いた。 『痛い。ごめんなさい。こわい。暗い。寂しい。お腹が空いた。お水をください』 飯島が公園の砂場でリウ(六)の琥珀を発見したときも、悲しみがこみあげてきたが、その時の比ではない。質量をともなった感情が飯島の内臓をかき回して激痛を与えた。恐ろしい勢いで涙があふれた。 「なんで? 何なんですかこれは? 俺の中に俺じゃない感情があります」 「琥珀から手を離せ」 鬼子母神が叫んだ。 飯島は琥珀を投げ捨てようとした。しかし右手は飯島の意思に反して強く琥珀を握りしめている。 「飯島、口を開けろ」 飯島は必死に口を開いた。鬼子母は飯島の口に自分の唇を押し付けて、甘味のある液体を口移しに流し込んだ。甘味は飯島の体内で暴れ狂っていた感情を鎮めた。手のひらから琥珀が落ちた。 飯島は床に這いつくばって荒い息をついた。
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