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「何・・・何なんですか、今のは」
「甘露だ。すべての痛みを鎮める天界のしずくだ。お前の体内には、使い魔の感情が侵入している。リウ(六)と言う使い魔は、感情を刃にして攻撃できるようだ。やつの感情の破片がお前の体に残っていた」
「・・・それ、消えたんですか?」
「いや、消えてはおらぬ。鎮まっただけだ。また暴れるかもしれん」
飯島はゾッとした。またあの恐ろしい情緒が体内で暴れだすのか。
「飯島さん。しばらくうちに泊まったらどうかしら。二階が宿直室になってるの。何かあったらすぐに対応できるわ」
園長が心配そうに言ってくれた。
「いいんですか?」
「ええ。今は誰も使っていないの。そうした方が安心だわ、ね。鬼子母さん。甘露は冷蔵庫に入れて置けばいいかしら?」
「うむ。感情が暴れだしたらすぐに飲ませてやれ。この保育園には天界につながる霊道を開いておるから、わしもすぐに駆け付けられる。なんならわしが夢枕で番をしてやってもいいぞ」
「飯島君、そうさせてもらえ。この方が夢枕に立ってくれれば安心だ」
森本捜査一課長も強く勧めてきた。
「いえ・・・それはそれで眠れなさそうなんで遠慮します」
飯島は人間ではない保育士が淹れてくれた麦茶を飲んだ。先ほどの甘露が数滴たらされているのでうっすらと甘い。
「うまいだろう。滋養が体にしみわたるだろう。人間の分際でこんなものが飲めるのだからわしに感謝しろよ」
「・・・ありがとうございます。ついでにあの保育士さんが動いている仕組みは何ですか」
「ふん。あんなものは園長が作った人形にわしが一息吹きこめば一か月は動く」
「便利ですね」
「飯島君もそう思うかい? 僕もあれをどうにかして機動隊あたりに紛れ込ませたいんだけど、さすがに無理なんだよな」
森本捜査一課長は羨ましそうに言った。
そんな雑談をしているうちに飯島の気分も回復してきた。
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