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ハンモックの上で、サン(三)が話しかけてきた。
「君の親は、どんな風にひどかったの?」
「僕の親は、殴ったりけったり、水も飲ませてくれなかったよ。夜は一人で置いてけぼりさ」
リウ(六)はしゃべりながら驚いていた。記憶には強烈な痛みが伴っていたのに。今は何も感じない。
家から出してもらえなかったリウ(六)は、他人と言葉を交わす機会もなかった。大人たちが帰ってこなかった夜、部屋を抜け出してさまよっていたリウ(六)に話しかけてきた人がいた。
『ぼく、どうしたの? 』
『ぼく、ぼくは・・・』
リウ(六)はうまく声を出せなかった。自分がなぜここにいるのか、話そうとすると強烈な痛みが襲った。記憶の痛みとリアルな痛みの区別がつかないのはリウ(六)が幼かったせいなのか、特殊な環境で育ったせいなのか。
リウ(六)は話しかけてくれた女性を突き飛ばして、めちゃくちゃに走り回った。でも、リウ(六)が帰る場所は親たちの部屋しかなかった。
あの時の痛みが、ない。
これが使い魔になるということなのか。
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