人参果(にんじんか)

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「どうしたの?」 サン(三)が心配そうに顏を覗き込んだ。 「いや、なんでもないよ」 「そっか。ならよかった。君も使い魔になったばかりだから、とまどうこともあるよね」 「うん・・・サン(三)はいつ使い魔になったの?」 「いつから、かなあ・・・。人間の時間で言ったらどれくらいになるんだろう。リウ(六)は、教育ママって知ってる?」 「ううん?」 「最近はお受験っていうらしいね。僕の母親は、ものすごい教育ママだった。幼稚園の頃から漢字と九九を覚えさせられて、寝る時間以外はずっと勉強だったよ。ご飯の時間も壁に張った日本地図とにらめっこ。ちゃんと漢字を覚えないと眠らせてもらえないんだ。ずっと正座して、じっと漢字を見てると、なんだかぐるぐる回りだすような気がして、泣きだしたら物差しで叩かれた。そんな声をシンが聞いてくれた。シンはあの女を押さえつけて、何でも聞けっていったんだ。だから僕は聞いたよ。マレーシアの首都はどこですか。ギリシアは何気候ですか、銅の元素記号は何ですか、僕の好きな食べ物は何ですか・・・ 何も答えられなかったよ。だから僕は、罰として、あの女の脳みそを食べた。つけてても無駄だから。大人はね。みんな、バカなんだよ」 リウ(六)はうなずいた。 「うん。僕もそう思う。大人はバカだよ。それに、よわい。」 「そう。その通りだよ」 サン(三)は満足したように微笑した。ハンモックの端っこで、スー(四)がミカンでお手玉をしている。サンとリウが自分を見ていることに気づくと、 「おミカンどうぞ。」 と差し出した。 サン(三)は答えた 「いや、今日はいいよ。みんな、ゆっくり眠ろう」 三体は、ゆっくりと揺れるハンモックの中で眠りについた。
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