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「・・・赤ちゃん・・・?」
「うん。そう見えるよね。これ、人参果って言うんだ。赤ん坊の姿をした果実が実る。西遊記って知ってるかい? 知らないか。孫悟空と猪八戒、沙悟浄っていう妖怪が、三蔵法師ってお坊さんを守りながらインドまでお経を取りに行くお話さ。その三蔵って坊さんが馬鹿で仕方ないんだ。旅の途中に、人参果の木と出会うんだけど、孫悟空と猪八戒は、果物だと分かって食べるんだよね。でも、三蔵法師は見た目でしか判断できないから、二人が赤ん坊を食ったと怒り狂うんだ。ぬれ衣だよ。馬鹿だよね」
「うん。馬鹿だね」
「そうだよ。三蔵は、馬鹿な上に弱いんだ」
「ふうん」
「なんでバカなんだと思う?」
「・・・分からない」
「それはね、三蔵法師が大人だからなんだよ。大人はみんな、偉そうにしてるけどバカで、強そうにしてるけど弱いんだ」
リウは、自分を虐待していた男と女の事を思い出した。
「うん。ぼくもそう思う」
シンは嬉しそうに笑った。
「正確には、この木は人参果じゃない。似てるから、僕が勝手にそう呼んでるだけ。この木はね、僕のお母さんなんだよ」
「お母さん・・・?」
「そう」
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