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少女は公園に向かった。古い団地の真ん中に設置されている公園に人の気配はない。住人の高齢化が進むと同時に地価が下がり、家賃も値下がりしてしまったので治安も悪くなった。ファミリー世帯からは敬遠されている地域だ。
公園の遊具も錆びついていて、雑草も生え放題だ。外国人が麻薬の売買をしているとの情報もあるから、飯島の巡回コースになっている。子供が遊ぶ姿を見たことがない。
少女は血まみれの衣服のままだ。飯島は凄惨な現場を見たせいで感覚が麻痺しているが、異様な姿だ。
「あの水道で水を飲んでいたんだな」
どこの公園にも設置されているような水飲み場だ。蛇口をひねると上向きに水が上がってきて、それを飲むタイプのもの。正式名称は立形水飲水栓。飯島は巡回中に認知症の老人を保護したときに調書に記したことがある。
しかしここの水道は水受けに落ち葉がたまっているし、ろくに管理されていない感じだ。こんな水飲みたくはないなあ。
と飯島がぼんやりと考えていると、少女はしゃがみ込み、何かを探し始めた。
さっきの現場でも何か探していたなあ、と思っていると、少女は飯島を見上げて
「お前は砂場にいけ」
「え?」
「探すんだよ」
「な、何をですか」
「いいから探せ。見つかれば分かる」
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