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「ねえ、ルナリー」
「どうしました?所長」
「あなたは、何で此処に来たの?」
突然呼び出されて、そして、そんな質問されて。
私はびっくりした。
「……どうしてですか?」
聞けば、所長は少し笑う。
切ないひとみ。
「だって、あなたは……男性のことを恨んでいないでしょう?苦しみや悲しみを与えられた訳じゃないし」
所長の過去は、詳しく聞いたことがない。
ただ、裏切られたことがあるって。
それだけ聞いた。
「まあ……そうですね」
小さな痛みを受けたことはある。
だけど、その痛みの棘は抜かれている。
今は忘れてしまった、遥か遠いきもち。
だって、思い出すまでない。
そんなの、時間の無駄だから。
「じゃあ、どうして?」
「女性が男性を傷つけることもあるけど、力が強い男性が女性を力づくで苦しめる世の中が嫌いだからです。女は力がないとナメてる男にお仕置きしたくて」
「ふふ、物騒ね」
こんな会社を作った所長が、そんなこというなんて。
「物騒でいいんですよ。そういう人がいてもいいのかなって」
「そうね。……ありがとう、ルナリー」
「いいえ」
ひとりでも、苦しむ女性が救われるように。
苦しみで心が痛くなるひとがいなくなりますように。
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