ダークヒーローとかダークヒロインって言うけど、結果誰かを助けてることに変わりはないわけで

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あそぼーよ、なんて良く言えたものだわ。 遊びじゃない、本気だ。 冗談混じりのことばに隠されたホンキ。 プロのわたしでも、太刀打ちするのに骨が折れるなんて。 「おねーさん。俺はね、本当にレイが好きだったんだよ。だから、俺好みにしたかっただけ」 自分好みに相手をカスタムしたいなんて。 そこに、相手の気持ちはない。 相手の同意があればいい。 彼好みまたは彼女好みにしたい。 そう思う人たちがいるから。 だけど、この男の思考はそうじゃない。 相手を自分の思うまま操りたいだけ。 「ムナクソ悪いわね」 「わあ。だめだよ?レディがそんなこと言っちゃ」 やれやれ、といった表情。 今がチャンス、と鳩尾に向かい拳を握りしめる。 が、叩き込む前にかわしていく男の体。 「あれ?俺に隙が出来たと思った?」 だめだよー?油断しちゃ。 言って、バランスが崩れた私に蹴りを繰り出してきた。 避けようがなく、地面に叩かれる私に、男はまだやる?と軽快に聞いてくる。 「やるわよ」 アバラ一本折れたわね。 軋む体。 だけど、負けられない。 「…………降参した方がいいよ?綺麗な顔にも傷がついてる」 「誰のせいよ」 このサイコパスめ。 だけど、そうか。 攻略法が分かったわ。 「んー?俺?」 言う相手の眼前、私は顔を寄せる。 くちびるが、触れるか触れないかのギリギリ。 「……え?」 初めて相手に隙が出来た。 「褒めてくれてありがと」 言って、足を思い切り踏みつけた。 「っ!」 あら、そんな苦悶の表情を浮かべることもできるのね? 「これで、終わりだわ」 私は、男のタマに思い切り膝蹴りした。 サイコパスでも、やっぱり弱点は同じだったらしい。 揺らぐ男の鳩尾に、私はトドメとばかりに拳を叩き込んだ。 メリ、と骨の軋む音。 男は泡を吹いて倒れた。 「……もう、するんじゃないわよ。あなたの相手は骨が折れるもの」 言って、私は男を近くの路地裏に放って歩き出した。 近くはみんな空き家。 全く、好都合だったわね。 体はぼろぼろだ。 「………休み申請しないとね」 しばらくは、休業かしらね。
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