窓際の男

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 電車が目的の駅に着いた。達雄のオフィスはその駅から地下道でつながっている高層ビルの十階だ。達雄は十階までエレベーターで昇り窓際の席に座った。見渡せば出社している社員は三割程度。誰もが無言でパソコンと対話中だ。 「確かに...無駄ばかりだな...」  達雄がパソコンを起動するとOSの初期化が始まった。その時、部長の槍手と目があった。彼とは同期だ。営業の槍手と言えば大勢いた同期の中でも出世頭の一人であった。部下に何かてきぱきと指示を出している。達雄は声をかけようか少し迷った。 「やめておこう」  どうせ昼食後には面談だ。  達雄はメールを一通りチェックした後、在宅中に届いた業務通知に改めて目を通した。 『構造改革に伴う早期退職に関して』  達雄はもう一度読み終えると、やることもなくなり早めのランチに席を立った。
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