窓際の男

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 外に出るとまだ霧のような雨が降り続いている。達雄は行きつけの喫茶店に入った。ガラガラだ。窓際の席に自然に足が向く。あまり食欲はなかったが食後にコーヒーが付く日替わりランチを頼んだ。雨に煙る街並みを横目に淡々と箸を動かす達雄。ふと、見渡せばいつの間にかあたりは満席になっていた。ここでもスマホと無言でにらめっこ。達雄の前に置かれたコーヒーはすっかり冷たくなっていた。  達雄は会社に戻り面談の準備をしている。とは言え午前中目を通した業務通知をプリントするだけだ。時間になり会議室に向かう。会議室ではあえて窓側を背にして座った。もう雨を見るのはたくさんだった。プリントされた業務通知を目の前に置くと見慣れた部屋が歪んで見えた。
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