これは友達の話

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これは友達の話

 最近、クラスで仲の良い男友達から恋愛相談を受けている。相談されるときに「友達の話なんだけど」と、必ずと言っていいほど前置きがある。  ――『その子と仲良いとは思うんだけど、他に仲良い男子がいるっぽくて』  ――『椿(つばき)はどういう人がタイプなの?』  ――『遊びに誘ったりしたら迷惑になんのかな』  ――『これ、好きで集めてるって聞いてたから』  話を聞いているうちに、もしかするとこれって九重(ここのえ)本人の話で、相手はあたしのことなんじゃないかって思い始めていた。遊びの話をして、あたしが誘っていいんじゃないって答えた後に誘われたし(2人きりじゃなくて複数人だったけど)、集めてると話したペットボトルのお茶のおまけも、好きだと言ったらわざわざあたしにくれた。  あたしは、九重と仲が良い自信もある。 「椿、何飲みたい?」  放課後。いつもの恋愛相談が始まる前に九重が席を立つ。 「じゃあ、いちごミルク! やったー、九重のおごり?」 「いや、モリスケがおごってくれるって。ついでに椿のもいいって」 「えー、それはいいのかなぁ」  教室の扉から顔をのぞかせるのは、隣の席の森田(もりた)。ひらひらと手を振る彼に、あたしも手を振り返す。 「いーよ、バイト代入ったから」 「バイト代は大事にしないと。九重はいろいろこき使われてるからもらってもいいけど、森田にはこき使われてないもん」  森田は恋愛相談してくるようなこともないし、親切だし、優しいし。隣の席になったばかりの森田はよく知らなかったけど、話せば楽しくて今ではうるさすぎて先生に注意されることもあるくらい、仲が良くなった。
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