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「おーっす、リリィ」
美玖の部屋から出てきたリリィを見つけると佐藤はヒラヒラと手を振った。お気楽な佐藤の様子にリリィはあからさまに機嫌を損ねたと言わんばかりの目を向けると佐藤の横を通り抜けた。
さっさと歩くリリィに佐藤はわざとらしく大きくため息を吐いて小走りで追いかけ隣を歩いた。
「つれねえの」
「今に始まったことじゃないわ」
「そーね」
「で?」
「あ?」
「きちんと仕事をしているの?」
「おかげさまで」
「どうだか」
「リリィこそしっかり仕事してんのか?」
「当たり前じゃない」
軽口を叩きあいながら二人は自分たちの部屋に戻って来た。リリィを先に通して佐藤はドアを閉めると後ろ手に鍵を閉めた。いつもならそんなことをしない佐藤にリリィは振り向き訝し気に佐藤を睨んだ。
「何?」
「別に?俺は休憩しに帰ってきただけですけど」
「なんで鍵を閉めたの?」
「出たきゃ勝手に開けろよ。開けれんだろ」
「佐藤にしては用心深いじゃない」
「そう?」
「……」
じっと睨むリリィの視線に佐藤は笑いながらソファに腰を下ろすと運転時の帽子を乱暴にテーブルに放ってポケットから煙草を取り出し火をつけた。窓も開けず換気のなっていない部屋で煙草の煙がむわっと広がる。
けほっとリリィが咳をすると佐藤はさも楽しそうに笑いソファの隣を叩いた。
「リリィも一本いかが?」
「いらない」
「そ」
「私まだ未成年なの」
「知ってまーす」
相変わらず軽い佐藤にリリィは眉間に皺を寄せ、佐藤が案内した方ではない向かい側のソファに腰を下ろした。背筋を伸ばして座っているリリィに佐藤は鼻を鳴らして笑った。
「さて、やるか」
「その前に煙草消してよ」
「やだね」
「じゃあやらない」
「あーあー!わかった。……早く終わらせようぜ、面倒くせえ」
降参だと言わんばかりに佐藤は両手を上げ、すぐに煙草をもみ消した。
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