4話

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 眩しい日差しで世那は目を覚ました。ヒリヒリする肌と焼けそうな目の痛みに世那は布団を深く被り、日差しから逃げた。嫌味たらしく利津が開け放っていったカーテンが憎らしい。  昨日カーテンを閉めてくれた女は来るだろうか。先に利津が来るだろうか。世那は半ば諦めながら布団にくるまってじっと耐えた。  暫くして、廊下の方から何やら音が聞こえて世那は布団の中から少しだけ顔を出してじっとそちらを睨んだ。  やってきたのは利津ではなく昨日やってきた女。がらがらと重そうなカートを引きながら入ってくると立ち止まってぺこりと頭を下げた。 「失礼します。ご飯お持ちしました。それと、浴室など掃除させていただきますね」  快活な声ではっきり言うとサイドテーブルに食事を置き、カートを引きながら窓の方へ歩いていった。  当たり前のようにカーテンが閉められ、部屋の電気が付けられる。再びカートを引きながら脱衣所へと姿を消した。  サーっとシャワーの水が流れる音が部屋に響き渡る。どうやら浴室を掃除しているようだ。捕虜にシャワーが与えられるのもどうかと思うが、たった一度使っただけで綺麗にするのは更に理解不能で世那は布団から顔を出してそちらを睨んだ。  だが、女の動向よりもテーブルにのった食事の香りが鼻に届くと同時にお腹がぐーっと鳴った。今食べれば女と鉢合わせることになるのは必至で、できれば女が出て行ってからいただきたい。それに下着も履いていないただ浴衣一枚の姿見られたくはなかった。  耐えようと決めたところでまたお腹が鳴った。 「少しだけ……」  そう自分に言い聞かせ、世那は布団から出て床に足をついた。ジャラジャラと鳴る鎖をなるべくゆっくり歩くことで誤魔化し、テーブルの前についた。何がのっているのか確認しようとしたところでおもむろにドアが開いてしまった。 「あっ、おはようございます!」 「……!」  世那を見た女はにっこりと笑い、深々と頭を下げた。声をかけられたことで世那は飛び上がり、乱れた着流しを整え、逃げるようにそそくさとベッドの方へ戻ろうとした。 「私のことは気にせず食べちゃってください。掃除道具取りに来ただけなので」  情けない世那の後ろ姿を気にするそぶりもなく女は快活に話すと、カートの中をガサゴソと鳴らして何かを取り出した。女の手には広がった歯ブラシがあり、人懐っこい笑みを浮かべ、もう一度頭を下げると脱衣所に消えていった。  ベッドに戻ろうとしたところで声をかけられ、世那は固まっていたことに気づく。下着も履いていない露出狂みたいな格好で女の前に出てしまったことへの羞恥心と、食べ物を取ろうとしたところを見られたことへの情けなさに顔が真っ赤になった。  ただ、今更布団の中に隠れても情けなさが増すだけで空腹も満たされない。世那は覚悟を決め、浴衣の重なる部分をしっかり押さえて椅子に座った。
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