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男達の中に立ちはだかるにはあまりに小さく、それでいて幼い女はおさげに結われた三つ編みを揺らし、大きな黒い瞳でじっと執事達を睨んだ。
「おやめください、だって。フフッ」
「かわいらしい人間の女が俺たちに口答えしようってのか?お前まで15かそこらだろ?可愛がってお兄さんたちが可愛がってやろうか?」
下品な物言いの執事達をものともせず、女は入ってきた時と同じように芯のある声で答えた。
「ウチの馬鹿を引き取りに来ました」
「馬鹿じゃなくて佐藤な、リリィ」
腕を掴まれ今にも捕食されそうになりながら佐藤はリリィに反論した。リリィはじっと佐藤を睨むと執事たちに視線を戻し佐藤を指さした。
「この男の血は汚れています。吸血はやめた方がいいかと」
「ハハハッ、間違ってねえけど酷い言いようだなぁ」
「吸血以外の方法で処罰する方がいいかと。いえ……処罰してください」
「え?やー待てよ。助けに来てくれたんじゃないの?」
「誰が誰を?」
「えー……」
2人の漫才じみたやりとりに腕をつかんでいた執事は嫌気がさして振り放した。見た目は人間の者へと戻り、佐藤を掴んでいた手をまるで汚いものを触ったかのように大きく振った。
「あー人間臭えったらありゃしねえ。仕事に戻ろうぜ」
「そうだな」
「はあ……」
執事たちはブツブツ文句を言いながら部屋から出て行った。
腕を掴まれていた佐藤は痛くもなかったくせに痛いと言わんばかりに手を振り、ポケットから煙草を取り出すと口に咥えて火をつけた。
「ふぅ……まじやべえ」
「外で吸う約束でしょ」
「いいじゃん。誰もいないし」
「仕事頼みに来たんだけど」
「あー?今さっき利津様連れて帰って来たばっかなんですけど」
「その利津様からのお仕事」
「……うわぁ、先に言えよ。吸っちまった」
「怒られるわね」
「図ったな?」
「さあ?」
「わぁ……もうマジ、うわぁ……」
声にならない声を上げながら佐藤は煙草をもみ消すとだらしなく首からぶら下がっていたネクタイを抜き去りジャケットを脱いでワイシャツの袖口をめくりあげた。仕事内容を伝えていないにも関わらず動きやすい格好に身を整えていく佐藤にリリィは感嘆の溜息を漏らした。
「よくわかったわね、力仕事だって」
「そりゃわかるよ。侵入者だろ?」
「早耳」
「馬鹿な吸血鬼様達がお話あそばされておりましたからねぇ」
ふざけながら言う佐藤にリリィは無視をして利津から聞いてきたメモを佐藤に差し出すとリリィは部屋のドアを開けた。佐藤は両手を天高く伸ばして伸びをするとリリィの横を通って先に出て行った。
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