翼をください

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翼をください

 この大空に翼を広げて、飛んでゆきたいよ。  悲しみのない、自由な空へ  翼はためかせ、行きたい――。  合唱コンクールのスポットライトが当たって。やわらかなピアノの一音がホールに響いて。  私、井出 心(いで こころ)は、大切な人へ、この歌を届ける。  夕空(ゆうぞら)あかね。私の親友。  いつも笑顔で、いつも明るい。一緒にいるとつい笑顔になる、そんな優しい子だった。  だった。そう、これは過去形。本当は過去形なんかで終わらせたくなかった。ずっと一緒にいて、笑いあっていたかった。  けれど運命は本当に残酷で、私からいとも簡単に親友を奪っていった。
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