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瞬きの間にその神々しい姿は見えなくなったが、幻だと錯覚することなく左近と葉子は互いの手を握り締めた。
まさに神からの祝福を受け、歩みを止めそうなほどの衝撃を受けたにも関わらず、二人の足は着実に神社へと進み続ける。
気付けば目の前に迫っていた鳥居をくぐり、参道を進んで本殿へと到着すると今まで降っていた雨が上がった。
神社で左近の親族と待っていた久万山や猫倉も姿を表し、行列をなしていた彼らに労いの言葉をかけていく。
そしてどこか夢うつつな新郎新婦を見ると、二人は意味ありげに笑って顔を見合わせたあと、参列した親族たちを案内し始めた。
『二人とも歩き続けて疲れただろう、少し休んでからゆっくりおいで』
『場繋ぎの余興は得意だからねぇ、私らに任せなさいな』
去り際にそう声をかけられ、本殿へ入っていく久万山と猫倉の背中を見送りながら、左近と葉子はそっと息を吐く。
「……狐の嫁入り大成功だね、さーくん」
「あぁ、嫁に来てくれてありがとう葉子」
手を取り合って微笑み合う彼らの頭上には、どこまでも青く雄大な空が広がり、二人の門出を祝うように立派な虹がかけられていた。
end
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