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嫁入り行列が始まるようで。
待ちに待った祝言当日。
葉子の実家にて準備をしていた左近は、緊張した面持ちで正装に身を包んでいた。
天気は雲一つない快晴で、まさに晴れの日に相応しい様相をみせる。
葉子の実家に伝わる嫁入り行列の流れとして、嫁の家から婿の家まで親族みなで列をなす。
化かす術で降らせた雨が上がる前に、婿の家へ到着しなければならないというものだ。
無事に成功するだろうかと不安に押し潰されそうになっていた時、最終確認をするために久万山と猫倉が左近のもとを訪れた。
「おやおや。新郎が今からそんな青白い顔してて大丈夫かい?」
「猫倉さん、久万山さん……その、心配はいらないとは分かっているんですが、どうにも落ち着かなくて」
「ははっ。確かに婚儀を行うこと自体に緊張する気持ちは分かるよ。でも大丈夫。私たちがついているから、狐嶋さんはどんと胸を張って彼女の隣を歩けば良いんだよ」
「おおっ! これはまた美しい花嫁さんの登場だねぇ。ほら狐嶋さん、後のことは私らに任せて、花嫁さんのもとへ行っといで」
左近は勇気づけてくれた二人の言葉を胸に、後ろを振り返る。そこには綺麗な白無垢に身を包んだ美しい葉子が恥ずかしそうに頬を染めて立っていた。
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