こっちの世・中学生の沙羅

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「おおい、もうそこまででいいだろう。いいか、いろいろな詮索はもう終わりにしよう。今は篠田さんも元気にやっている。だから、そっとしてやろう」  先生がそう言うと皆が黙った。一応、納得したような顔が多い。  窓際の一番うしろの席が用意されていた。そこに座って教室内を眺めると生徒たちの横顔がよく見えた。  授業は楽しい。別々の師にこうして丁寧に物事を教えてもらうことなど初めてだったから。  まず数学、これは方程式などを使い、物事を証明する。なるほどと思う。  国語はこの国の言語を紐解き、それらに使われる言葉や漢字を習う。  理科はあたりまえに考えている生活の普通を教えてくれる。光の仕組み、電力、物体の流れなど。  そして英語、わたしが闇火花を使えば、即座にその意味を教えてくれるが、ここではしないようにする。皆と同じようにスペルを覚えたりすることが楽しいから。こっちの世にも他にさまざまな国があり、その言語を持っているのだ。  それを知ることでこの世がどんなに精密に作られているのかが実感できた。それなのに、皆、テストのためにただその知識を詰め込むだけ。それはおいしい料理を味合わずに口に押し込み、ただ呑み込んでいるだけに過ぎないのではないか。
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