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放課後、朱里は塾があると言って急いで帰って行った。
一人で徒歩十分ほどの家に帰ると叔父がほっとした顔をした。帰ってくるまで心配だったらしい。帰るなり、どうだったか、友達はできたか、うまく立ち回れたかなどの質問責めだった。しかし、わたしがなにか言おうとするとすでに闇花火たちがタケルに伝えている。
「そうか。まあ受け入れられたようだな。安心した。じゃあ、夕食の買い物をしてくる。今日は田牧さんも来るんだって。美玖利も早く帰るって言ってたからすき焼きにしようかな」
そう言うが早いかタケルは家から出ていった。
わたしは居間にある大きなソファに腰を下ろす。わりとこじんまりとした家。一階には台所とこの居間があり、洗面所とお風呂がある。二階には寝室が三つ。それぞれがプライベートで寝られる。
美玖利は相変わらず病院の小児科で働いて、叔父のタケルは家のことをしてくれる。それでわたしは普通の中学生として学校へ行くことができる。
座ったままのんびりしていたら、テーブルの上に置いたスマホが着信音を鳴らした。覗いてみるとタケルからだ。
≪学校から帰ったらまず制服を脱いでハンガーにかけること。皺になるから。宿題があったらやっておくこと。わからなかったら夜、美玖利が見てくれると思う≫
ふぅとため息をつく。こちらでは一分たりとも空を流れる雲を見つめることができない様子。このスマホとは非常に便利ではあるが、皆を干渉し、忙しくさせている。
わたしはカバンを手にして階段を上がった。
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