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そんな挨拶をしている間に、前に美玖利が乗り、後ろにタケル叔父が乗った。せかされているようで、わたしもすぐに後部座席に腰を下ろした。
「皆さま、シートベルトをしっかりなさってくださいね。わたくしは、運転免許を持っておりますが、二年ぶりの運転なのです」
田牧はこのために実家から車を借りたらしい。
廃神社までは少し距離があった。皆でバスと電車で行くこともできるが、車なら十五分ほどで行けるとのこと。
この乗り物は便利だが、その代わりに土を覆い、滑らかに走るためにいろいろなことをせねばならない。自然の大地を覆ってしまう。そんな懸念があった。
わたしが見つかったその廃神社の山は、車でならあっという間だった。そのふもとは、かなり整備されてその辺りに観光のための施設が建つらしい。工事中の立て看板があり、ぐるりと三メートルほどの柵で囲まれている。
わたしたちが近づいていくとプレハブの小屋から誰かが出てきた。
四十代の体格のいい男性。くっきりとした目と日焼けした浅黒い顔が印象的だ。その人は我らの顔を一人一人見て、最後にわたしをじっくりと見た。
「ああ、君か。よかった、元気そうで。あの時はもうだめかと思ったんだ」
人懐っこそうな笑顔を向けてきた。すぐにタケルが説明する。
「この吉田さんが沙羅を見つけてくれた。この辺りの工事も受け持っているって聞いて」
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