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十一時過ぎ、夜道を皆で工事中の柵まで戻ってきた。その前でたたずむわたしたち。
ごっつい南京錠を恨めしく見つめる。鍵をかけてしまったから中へ入れない。しかもセキュリティーカメラが作動している。わたしと美玖利なら、このくらいの柵は乗り越えられるが、録画されているのならそれは無謀だ。
カメラの死角にとどまって、柵の奥を見ていた。
「すみません。あの時に言うべきでした。そうすれば」
田牧がいつもより素直でシュンとしている。
「いや、あんときの腹で、あのまま十一時半まで待てたか?」
タケルがからかうように言うと、田牧は自分の腹を抑え、首を振りながらふふっと笑う。
「明日、また来る?」
それしかない。また吉田に連絡を取って鍵を開けてもらうほかないだろう。けれど、そんな夜中になにをするんだって不審に思われそうだ。
そうあきらめかけていたらタケルが決断したような力強い口調で、
「じゃあ、俺が行ってくる。イモリの姿に戻れば柵の下を通れるから。一応、白雪も連れてっていい?」
それにはわたしも美玖利もお互いに目を合わせ、どうするか即座に決めかねた。
もしかするととんでもない危険が待っているかもしれない。それにあっちの世ではなく、別のところへ行ってしまうかもしれない。
しかし、わたしの肩に止まっていた白雪がむっくりと頭を上げ、タケルの頭にジャンプした。
「いいのか? 行ってくれるということ?」
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