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つい口元が、緩む。
私も大概性格が悪いなと、思ってしまった。
「好きです。あ……」
言うつもりもなかったのに、と頬に書かれた文字に、また、口元は緩む。
答えるかどうかはまだ分からないけど、純粋に嬉しかった。
「あ、晴れましたねぇ。虹出てますよー!」
店員さんの言葉に、窓ガラスを見つめた。
大きな虹が、空に向かってかかっている。
キラキラと光を反射しながら、虹を見てスマホを構えればインカメラになっていたようだ。
映り込む私と、同じ目をした海都。
海都となら、悲しみも乗り越えられる気がする。
失恋したばかりなのに単純な自分を、軽く笑ってから、海都の方に向き直す。
「考えさせてください」
「いくらでも、待ちます。振られても、それを栄養にイイ男になるんで」
かっこつけた海都の顔に、不覚にもときめいた。
私が落ちていくのも、案外遠くない気がする。
海都も分かってるのか、最後のココアを飲み干してから、ニヤリと笑った。
「天乃先輩の心の栄養剤になりますよ。痛みとか、悲しみじゃない」
「かっこつけんな」
「案外悪くないって顔してますけどね」
図星な言葉に、顔を逸らして、ココアを飲み干す。
雨が止んだ空を指さして、海都が呟く。
「晴れたんで、デートでもどうですか」
「新しく作る部活のことも話したいから、いいよ」
「よっしゃあ」
「どこ行こっか?」
「苗でも見に行きます? 俺、とうもろこしがいいっす!」
嬉しそうに微笑んだ海都の笑顔は、太陽みたいにキラキラと輝いていた。
<了>
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