3

1/1
前へ
/11ページ
次へ

3

◇◆◆◇ 親父との約束を果たす為にどうすればいいか、ひとりで悩み……考えた。 栗栖は俺と行動を共にする事が多い。 だから接触するチャンスはかなりある。 ただ、周りに人がいる時にそんな真似ができる筈がなく、2人きりの時にヤルしかないと思った。 飲み会はちょくちょくあるんだが、それとは別に、俺は個人的に栗栖を誘って飲みに行く事にした。 行先は小さなBARだ。 店内は薄暗く、テーブル席に座れば目立たない。 栗栖は誘った時に『どうかしたんですか? 珍しい』と言っていたが、俺は『お前はよくやってる、たまには労ってやりてぇからな』と、適当な事を言って誤魔化した。 店内に入り、酒を注文をして小さめなテーブル席に座った。 「若はこういう店がお好きなんですね?」 栗栖は周りを見回して言った。 「ああ、落ち着くからな」 落ち着くのは確かだが、今は別の意味で落ち着く。 やがて注文の酒が運ばれてきたが、軽く煽って気合いを入れる事にした。 落とすと言ってもやり方なんかわかる筈がない。 そこで、女を誘う時のやり方でやってみる事にした。 店は……この店を選んで正解だろう。 次に楽しい気分にさせる。 そういう流れを頭に描いていた。 高い酒でも構わねぇ好きな物を頼めと言ったら、栗栖は喜んだ。 「え、いいんすか?」 「ああ」 ここまでは上手く運んでいる(と思う)。 俺はウイスキーをロックで飲み干し、ほろ酔いになって気分が軽くなってきた。 ここらでぼちぼち話を切り出そうと思ったが、どう切り出せばいいか悩んだ。 悩んだ末に、そっちに入りやすいニューハーフからいってみようと思った。 「なあ栗栖、お前はニューハーフとか興味ねぇのか?」 俺はさりげなくそっちに話を振ってみた。 「ああ、俺はそっちの趣味はないっすね~、若はあるんすか?」 わかっちゃいたが、完璧に興味がなさそうだ。 逆に俺に聞いてきたが、俺も興味ない。 しかし、ここはアリと答えた方がいいような気がする。 「美人なら……ありかもな」 「え……、そうなんすか? 意外だな~、若は俺と一緒で興味ねぇと思ってました」 栗栖は驚いている。 嘘に決まってるが、そっち方向へ引きずり込むには、そう言わなきゃ話が進まねぇ。 「いや、栗栖、ニューハーフでも下手な女より綺麗な奴もいるぞ、それならお前でもいけるんじゃねぇか? な、いっぺん付き合ってみな」 無茶ぶりだとわかっちゃいたが、この際、強引に持っていくしかない。 「え、いや~、そりゃ……俺らの中にゃ売り専のボーイやホストに手ぇ出す奴もいますが、俺はどうにも受け付けないっす」 しかし、栗栖は俺を落胆させるような事を言う。 「だよな……、はあ~」 そうくるとは思っていたが、出来れば無理強いじゃなく、本人の意思を尊重したかった。 けれどこの様子じゃ仕方がない。 やっぱり『アレ』を使うしかなさそうだ。 催淫剤と意識を混濁させる効果がある薬、俺は予めそれを持ってきている。 ひとまず話題を変え、話を盛り上げて栗栖を酔わせる事にした。 俺は昔話を持ち出し、若い頃にやらかした失敗談を明かしたり、どこぞの組の若頭はSMが趣味なドMだとか、普段なら話さない事を栗栖に教えてやった。 栗栖は興味津々で話に聞き入り、その間酒を飲んでいた。 そうするうちにいい感じで酔いが回り、しばらくすると栗栖は小便をしにトイレに行った。 チャンスだ。 内ポケットから薬を出して、素早く栗栖のカクテルに入れた。 顆粒だからすぐに溶けるが、軽く振っておいた。 この薬を飲ませ、朦朧となったら店外に連れ出し、最寄りのホテルに連れ込む。 よし、上手くいきそうだ。 「あっ……」 だが、そこでふと気づいた。 俺は親父にタチをやらされたが、栗栖を相手にタチ役でいいんだろうか。 親父は栗栖をモノにするつもりでいるが、俺が抱いたら栗栖はネコになるんじゃないか? いや、待て……。 いきなり最後までやる必要はないだろう。 大体、経験の浅い俺が未経験の栗栖を掘るのは無理がある。 だとしたら、親父にやられたような事をやるしかないが……。 とは言っても、ディープスロートは無理だ。 つーか、キスもフェラも……やりたくねぇ。 親父の我儘のせいで、マジで泣きたくなるわ。 けど、やらなきゃ指がなくなる。 ………やるしかねぇ。 栗栖は俺より年上だが、イケメンで女にはモテる。 ブサイクをヤルよりゃマシだと思うしかない。 「若、どーも、すいません……」 栗栖が戻ってきた。 「小便くらいでいちいち気ぃ使うな」 「はい、へへっ、若は優しいっすね、これは内緒ですが、俺は前若頭の斎藤さんより若がいいっす」 泣かせる事を言うじゃねぇか。 屈託の無い笑顔を見たら……心がズキッと痛んだ。 『栗栖、申し訳ねぇ』心ん中でそう思った。 その直後に、栗栖はなにも知らずにカクテルを飲み干した。 それから数分後、栗栖は目が虚ろになり、テーブルに肘をついて頭を支えた。 「若……、すんません、なんだか酔っちまったみてぇで……」 「ああ、かまわねぇ、栗栖、そろそろ出るか、おい、ちょっと来てくれ」 何食わぬ顔で言ってママを呼んで金を払った。 「あらあら、大丈夫ですか?」 ママは栗栖を見て心配そうに声をかけてきたが、俺は背徳感に苛まれながら栗栖の腕を肩にかけた。 「ああ、飲みすぎただけだ、ほら栗栖、支えてやる」 「世話ぁかけて……申し訳ありません」 栗栖はすまなそうに詫びるが、俺がやろうとしている事を考えたら、詫びる必要なんかどこにもない。 「いいんだよ、ほら、行こう」 「は、はい……」 ふらつく栗栖を支えて店を出た。 「わ、若……、誰か呼ぶんすか?」 「いや、少し休んで帰ろう」 「休む……?」 「ああ、黙ってついてきな」 俺は良心をねじ伏せてラブホへ向かった。 幸いにも栗栖は俯いていたので、すんなりフロントへやってきた。 と言っても無人パネル式だ。 1階の適当な部屋を選んでポチッと押した。 「う……、ち、ちょっと待ってください」 その時、栗栖が異変に気づいてしまった。 「なんだ」 「これ……ここ、ラブホじゃ……」 朦朧としながら狼狽えている。 「黙ってついてくりゃいい」 「若……まさか」 すまん、栗栖……。 心を鬼にして実行あるのみだ。 「ああ、そういう事だ」 本来こんな趣味はねぇが、指を温存する為に、俺は……やる。 ポチッと押した部屋に向かった。 栗栖は無言のままだったが、俺には抗えないと諦めているんだろう。 こいつは俺よりも肝が据わっている。 もしこれが俺だったら、必死になって抗うだろう。 今でも親父を掘るのは抵抗がある。 あれから親父は誘ってこないが、俺が栗栖を落とすのを待っているようだ。 目的の部屋に入ったら、栗栖を支えてベッドに座らせた。 「若……、俺、若に……掘られるんすか?」 俯いたまま聞いてきたが、体がダルくて動けないんだろう。 ここまで来ちまったんだ。 ざっくりと事情を話す事にした。 「いや、実を言うと……親父がお前に目をつけた、俺はお前を落とせと命じられ、できなきゃ指を詰めろと言われたんだ、それでここに連れてきたんだが、掘るまではやらねぇよ、安心しな、親父はネコだ」 「おやっさんが……? って事はひょっとして若もやらされてるんじゃ? お、俺……、親父にそっちのけがあるんじゃねぇかって……前から薄々気づいてました」 さすがだ。 やっぱり栗栖は勘がいい。 「ああ、そうだが、頼まれてヤルと決めたのは俺だ」 親父も立場ってもんがあるし、全部親父のせいにするわけにはいかねぇ。 「そうっすか……、わかりました、俺は若について行くと決めた、若が望む通りにします、その……シャワー浴びてきます」 栗栖は健気な事を言って、素直に俺のいう事を聞くつもりだ。 「お前……」 胸にぐっときた。 思わず栗栖の隣に座り、肩を抱いた。 「す、すみません、手が震えて……、カクテルに……薬を盛ったんすね」 栗栖は上着を脱ごうとしたが、ふらついて上手く脱げない。 「ああ、そうだ、素直にいう事を聞くとは思えねぇからな、だからわりぃとは思ったが薬を使った、ほら、脱がせてやる」 立ち上がって栗栖の服を脱がせていったが、やがてパンイチになると、見事な刺青が姿を現した。 「あの……これでいいっす……いってきます」 栗栖はもう腹を決めている。 「一緒に行こう」 しかし、この状態じゃまともに歩けねぇ。 一緒にシャワーを浴びる事にして、栗栖を支えて浴室へ向かった。 脱衣場で栗栖を全裸にした後、俺もスーツを脱いで全裸になったが、親父があんな事を言うから、つい気になってナニに目がいっていた。 萎えてはいるが、確かに……大きい。 悔しいが、負けを認めざるを得なかった。 つーか、今はそれどころじゃねぇ。 浴室に入ってシャワーを浴びる事にした。 栗栖はフラつくので、床に座らせてその状態で体を洗ってやった。 俺はその後でざっと体を流した。 体を綺麗にしたとこで、ぼちぼちここら辺から始めねぇと……。 「栗栖……」 栗栖を立たせて抱き締めたが、栗栖は背の高さが同じ位だし、ガタイもいい。 抱き心地は十分過ぎるほどある。 これは親父にも言える事だが、明らかな女との違いは、男は体が硬ぇ事だ。 「若……、変な……気分っす」 栗栖は嫌がるわけでもなく、恥ずかしいらしい。 顔が赤らんでいて、目を泳がせている。 ノーマルなわりにはやけにそれらしい反応をする。 よくわかんねぇが、ここでキスをするべきだろう。 栗栖の頬に手をあてて顔を近づけたら、驚いた事に栗栖は自ら目を閉じた。 催淫剤のせいか? にしても、とても初めてとは思えない。 俺の頭ん中は?マークが飛び交っていたが、とにかく唇を吸った。 湯気が充満する中で抱き合ってやってるので、のぼせそうだが、栗栖は俺の背中を抱いて撫で回している。 この反応は明らかにおかしい……まさかとは思うが、キスをやめて聞いてみた。 「お前……男と経験あるんじゃねぇか?」 「俺……、昔チンピラだった時に……兄貴分に付き合わされてました」 やっぱり経験者だった。 けど、それなら何故? ってちょっと疑問に思う。 「でもよ、経験あるのにニューハーフが苦手だと言ったよな、ありゃどういう事だ?」 「昔ヤラされたのは無理矢理でして、だからそういう事には関わりたくねぇと思ったんす」 「そうだったのか……」 トラウマが原因でニューハーフを避けてるようだが、だとしたら、今だって俺に無理矢理ヤラれてるんだし、嫌悪してる筈だ。 「でもよ、今俺にキスされて……、お前、嫌じゃねぇのか?」 既にやっておきながら自分でも野暮な質問だと思ったが、やってる俺ですら、髭が当たる感触に嫌悪感を覚えるぐれぇだし、トラウマ持ちなら尚更嫌なんじゃないのか? 「うちの親父はたまに我儘を言いますが、基本的には子分を大事にする人だ、それに新しく若になられたあなたも、人情味に溢れた尊敬できる方だった、俺は……あなた方なら構わねーって、そう思います」 栗栖がそんな風に思っていたなんて……。 だったら薬など使わずに、正面切って事情を明かせばよかった。 「そうか、薬なんか使って悪かったな」 「いえ、そんな事は聞きづれぇ事だし……仕方ねぇっすよ、それに……少し薬が抜けてきました、俺……やります」 栗栖は言ったそばから俺の前にしゃがみ込んだ。 「えっ?」 戸惑ってる間にナニを掴んでパクリとやっちまった。 「あっ……」 じわっと気持ちよくなったが、俺がやるつもりだったのに、やって貰っていいんだろうか。 しかも親父同様、俺より遥かに上手い。 「くっ、う……」 ナニはあっという間に元気になり、栗栖が舌を器用に這わせてくるから、堪らなくなってきた。 なのに、栗栖は追い立てるように頭を揺らし始めた。 俺は自らを奮い立たせる為に、今日まで禁欲状態を保っていた。 竿が擦れる度にあっという間に昂り、やり始めてたった数分でイキそうになってきた。 「栗栖、出ちまう……」 肩を掴んで言ったが、栗栖は上目遣いでチラッと俺を見てやめようとしない。 止めようがなかった。 熱いものが込み上げ、栗栖の口内へ射精した。 「っ、わりぃ……」 俺の下につく者だからといって、こんな事をさせたらさすがに申し訳ねぇ。 「栗栖、もういいぞ……」 早く口から出して貰いたかったが、栗栖はなかなか離れようとせず、俺が出した物を飲み込んでいった。 全部飲み干してようやく顔を離し、ニッと笑ってみせる。 「へへっ、大丈夫っすよ、俺、経験あるんで」 トラウマを抱えてるっていうのに、飲精までして俺の前で笑顔を見せる。 「栗栖……」 それだけ慕ってくれてるんだと思ったら、感動すら覚えたが、ただ……すっきりしたところでふと思った。 栗栖が経験者ですんなりこういう行為に及んじまったら……俺が落とした事にはならない。 「なあ栗栖……」 「はい」 声をかけたら栗栖はゆっくりと立ち上がった。 「俺はお前を落とせと言われた、だからその……落とした事にしてくれねぇか? そうしなきゃ、また親父がごちゃごちゃ言ってくるかもしれねぇ」 親父は決して悪い人間ではないんだが、個人的な事となると、我儘なところが出ちまう。 「わかりました、じゃあ俺……、おやっさんとヤル事になったら、素人のふりをします」 栗栖はすんなり承諾してくれた。 「そうか……、ならいいが、お前にイカされたままじゃちょっとな、今度は俺がやるわ」 これは俺がやると決めた事だし、お返しにフェラだけでもしてやらなきゃ気が済まない。 栗栖の前にしゃがみ込んだ。 「はい、あのでも……、こんな事言っちゃ失礼かもしれませんが……、若は経験なかったんじゃ?」 栗栖は遠慮がちに聞いてくる。 「正直に言うわ……、ああ、経験はねぇ、ねーけど、やらせろ」 下手クソかもしれねぇが、やってやりてぇ。 目の前に垂れ下がる竿を掴み、口に頬張った。 なんとも言えない感触に背筋がぞっとする。 俺はゲイじゃないんだから当たり前だが、生々しい感触のソレは、口の中でぐんぐん張りを増していった。 「若にこんな事……、やべぇ……滅茶苦茶感じます」 栗栖は興奮しているようだが、ただでさえデカいナニは口の中いっぱいに膨らみ、俺は咥えきれなくなって一旦口から出した。 「っは、はあ、お前……でけぇからよ、キツいわ」 「すんません……」 栗栖は申し訳なさそうに謝る。 「咥えるのは難しいからよ、先っぽをやるわ」 竿を咥えるのは初心者マークの俺には厳しいので、先端をしゃぶる事にした。 どうやりゃいいかわからないが、自分が親父にされた時の事を思い出してやった。 舌でツルツルした先っぽを舐めまわしていると、太竿がドクンと跳ねて我慢汁が滲みだしてきた。 「うっ……」 ほんのり塩味な粘液が舌に粘り付き、気持ち悪くなってまた口を離しちまった。 「若、無理しないでください」 栗栖はやたら気遣ってくれる。 「いや、大丈夫だ、やる」 たかがこれくらい。 男に二言はねぇ。 やると言ったからには最後までやる。 腹を据えてもう一度舐めていった。 「すみません……、若、肩をお借りします」 栗栖はひとこと断って肩を掴んできた。 ナニはかなり張り詰めている。 イキそうなんじゃないかと思ったが、俺は飲むのは無理だ。 しかし、ここでやめたら男が廃る。 どうなるかわからないが、先端だけ頬張って舌を這わせていったら、栗栖は息を乱して『離れてください』と言った。 でも俺は、変に意地になってそのまま続けた。 「若……、すみません!」 栗栖が俺に謝った直後、ナニがビクンと跳ねて生ぬるい粘液が口の中に飛び散った。 「ふ、う"……」 独特な青臭さとぬめる感触が、口の中いっぱいに広がり、吐き気をもよおした。 堪らず顔を離し、口の中のもんを排水口に向かって吐いた。 「若、大丈夫ですか?」 栗栖は俺の背中を撫でて言ってくる。 「だ、大丈夫だ……」 本当は大丈夫じゃなかったが、若頭としてヘタレるわけにはいかない。 それにしても、ザーメンがこんなに不味い物だとは、当たり前に知らなかった。 栗栖はさっき俺のを飲んだが、よくこんな物を飲めるものだ。 俺にはそのレベル迄まだまだ到達できそうにないが、こんな難易度の高い事ができるとなると、また不安になってきた。 「栗栖……、お前、本当に素人のふりができるのか?」 カランから湯を出し、口をゆすぎながら聞いた。 「そっすね、はい……よくわかってます、若の指がかかってる、俺、絶対にバレないようにやりますから」 栗栖は約束してくれた。 「そうか……、こんな事を頼む羽目になるとはな、兎に角頼むぞ」 口をすすぎ終わり、立ち上がって片手で栗栖の肩を掴み、念を押すように頼んだ。 「若……」 「栗栖、すまねーな、だがよ、はっきり言って俺は……こんなくだらねぇ事で指を詰めたくねぇ、情けねぇ話だが……それが本音だ」 言い訳がましいし、みっともねぇのは承知だが、栗栖にゃ嘘をつきたくねぇ。 「はい、よくわかりました、あの……それより若……、失礼します」 栗栖は真面目な顔で頷いたが、俺をじっと見つめてガバッと抱きついてきた。 「ん、どうした?」 さっきあんな事までやっちまったんだ。 抱きつくぐれぇしれてるが、何か言いたげな面をしているのが気になった。 「俺……、こんな事になって……、益々若の事が好きになりました」 「えっ?」 今好きだと言ったが、そりゃ……マジで惚れてるって意味なのか? 「昔の事を忘れたくて……、そういう気持ちは抑えてましたが、若とこんな関係になって……、俺、やっぱり若の事好きっす」 気持ちを抑えていた? って事は……栗栖は密かに俺に惚れてたのか? いやいや、ちょい待て……、慕われんのは嬉しいが、俺は男に恋愛感情を持つって事がわからねぇ。 「なあ栗栖、俺はお前に好かれて悪い気はしねぇ、けどな、俺は親父に無理矢理やらされてこうなった……、だからよ、わりぃけど、そういうのはよくわからねぇんだ」 「いいんです、それでもかまいません、俺は補佐としてあなたを支えていくつもりです、あなたのそばにいられるなら、それで十分っす」 栗栖は刺青だらけの体で俺に忠誠を誓う。 残念ながら、今の俺には男同士で惚れた腫れたは分からねぇが、補佐として部下として……つくづく可愛い奴だと思った。 「栗栖……、俺はお前を頼りにしてる、そう言ってくれたら心強い」 元から栗栖の事は信頼していたが、こんな事になっちまって、強い絆が生まれたような気がした。 「ありがとうございます、若……、あの……キスだけ……、いいっすか?」 栗栖は言いにくそうに聞いてくる。 「ああ」 俺がやらかしたせいでこうなったんだ。 キス位かまやしねぇ。 「じゃ……、失礼します」 栗栖は一言断って俺の背中を抱くと、優しく唇を重ねてきた。 唇が触れたら髭が擦れあう。 やっぱ気持ちわりぃ……。 だがしかし、そんな風に思っちゃ駄目だ。 …………… それから後、俺達はラブホを出て迎えを呼んだ。 栗栖はすっかり正気に戻っている。 迎えの車が来たら、俺は栗栖と2人で後部座席に座ったが、栗栖は何気なく俺の手を握ってきた。 親父に握られた時は焦ったが、今は振り払う気持ちにはなれなかった。 そんな事より、親父と栗栖と俺、3人でヤルって……一体どうなるのか……。 そこんとこは不安だったが、予定の2ヶ月よりもかなり早く課題をクリアする事が出来た。 まぁーなんとかなるだろう。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加