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◇◆◆◇ 栗栖と軽く関係を持った後から、奴はやたらボディタッチをしてくるようになった。 何気なく背中や腰に触れたり、手を握ってくるのだが、皆がいる前ではやらない。 2人きりになった僅かな隙にすっと手を出してくる。 やめさせたかったが、気にしなければ気にならない程度の事だし、その位は許容してもいいだろう。 「若、書類はこれで終わりですか?」 「ああ、終わりだ」 今日は夕方から事務所で事務仕事をしていたが、若い衆は先に帰らせて、栗栖と2人で溜まった書類を片付けた。 「よし、じゃ帰ろう、お前はまた付き合いで呼ばれたりしてるんじゃねぇのか?」 書類を纏めて引き出しにしまい込み、栗栖に声をかけて立ち上がったが、栗栖は話を面白おかしく盛り上げるのが上手い為、他所の組からしょっちゅう誘いがくる。 「いえ、今日は特に……、それより俺は若と」 栗栖は何気なく背後に回り込み、背中から抱きしめてきた。 「栗栖……、話しただろ? 俺はそういうのは……」 あまり期待されたら困る。 「若、お願いします、少しだけ……」 なのに、耳に息がかかると背筋がぞくりとした。 そんな気はこれっぽっちもないつもりだが、親父と寝たせいで、そっち側に引き込まれつつあるのかもしれない。 「少しだけって……、なんだ? キスか?」 まぁ……キスくらいなら許してやろう。 「それもですが……こっちも」 ところが、片手がすーっと下に降りて股間を撫で回す。 「ここでか? 誰が来たらどうするんだよ」 この事務所は街中のビルの中にあり、狭いスペースにデスクが置いてあるだけだ。 本当にただの事務所って感じだし、ここでそんな事をするのは抵抗がある。 「誰も来やしませんよ、心配なら鍵をかけたらいいっす」 栗栖はやる気満々で言ってくるが、俺はそっち側に深入りしたくない。 「あのな、シャワーも浴びてねーしよ、俺はそういう事はちょっとな」 やんわりと断った。 「駄目……ですか?」 するとじっと見つめて聞いてきたが、やたら悲しげな表情をする。 「い、いや……、そんなにやりてぇのか?」 精悍な顔立ちをしているだけに、弱気な面を見たら気持ちが揺らぐ。 「そりゃ……はい、お願いします、やらせてください」 真剣な眼差しで懇願されたら……断りずらい。 「あ、ああ……、わかった」 仕方がない。 「ありがとうございます」 承諾したら、栗栖は笑顔で礼を言って俺の前に跪いた。 なんの躊躇もなく、ファスナーをさげてパンツの中からナニを引っ張り出したが、ナニは萎えている。 栗栖はダルダルの竿を掴み、パクっとひと息にいってしまった。 「うっ」 あたたかな粘膜に包まれると、体がビクッと震えた。 「はあ、若……、たまらねぇ」 栗栖はしゃぶりながら昂った顔で言ってきた。 カミングアウトする前は、そんな素振りは露ほども見せなかったのに、今はまるで別人のように積極的に振る舞う。 夢中になってナニをしゃぶっているが、上から見ていると、うっとりとした目付きで俺を見あげる。 俺の方が照れ臭くなったが、女がやるフェラとは明らかに違う。 がっつりと大胆に咥え込んでいるが、女より口が大きいから、根元付近まで咥える事ができる。 それに、同じ男だからだろう。 感じるポイントを熟知していて、上手い具合に舌を這わせる。 「っ、栗栖……」 ゾワッときて、背中側にあるテーブルに手をついた。 こんな事をされて感じている自分……。 これでいいのか? そう思ってはみたが、唾液を啜る音が狭い事務所に響き渡り、尚更興奮を煽り立てる。 早くもイキそうになってきた。 「出るぞ……、いいのか?」 焦って聞いたが、栗栖はやめようとはせずに頭を揺らし続けている。 ジュボジュボと音を立てながら、張り詰めた竿を口の中で扱かれちゃ、我慢出来なくなった。 「ふ……、ううっ!」 イク瞬間、テーブルの角を握りしめた。 竿がビクビク痙攣すると、快感が突き抜けていく。 栗栖は俺が出したやつを全部飲み干していったが、脈動がおさまっても、まだ物欲しそうに竿を舐め回している。 擽ったくてたまらねぇ。 「栗栖……もういい、そこまでだ」 「はい、わかりました」 声をかけたらスっと身を引き、内ポケットからハンカチを出して濡れた竿を拭った。 ナニを元通りにしまい込んで立ち上がったが、真ん前でじっと見つめられたら……目のやり場に困る。 堪らず顔を逸らしたら、頬に手が触れてきて唇が重なった。 なんとなくそう来るとは思っていた。 だから、たいして驚きはしなかったが、俺の出したザーメンの匂いがする。 少し気持ち悪かったが、我慢して栗栖の好きにさせてやった。 俺はやっぱり……こういった行為をするのは抵抗があるが、栗栖は飲精までしたんだ。 礼と言ったら大袈裟だが、奴のやりたいように任せた。 栗栖はなかなかやめようとせず、背中を強く締め付けてくる。 生温かな舌がヌルッと入り込み、反射的に鳥肌が立った。 「っ……、ちょい待て」 体を押してキスをやめさせた。 「すみません、つい……、きもかったっすか? ほんとに……申し訳ありません」 栗栖はペコペコ頭をさげて謝罪する。 「いや、まぁいい……、もう帰ろう」 別に怒っちゃいない。 ただ、俺自身……戸惑い、困惑しているだけだ。 それから後、事務所を出て栗栖の運転する車で親父の屋敷に向かった。 親父にはまだ栗栖の事を伝えてないが、何だかんだで約束した日から1ヶ月が過ぎようとしている。 親父に『上手くいった』と報告しなければならない。 助手席に座っているので、ハンドルを握る栗栖を見ながら、話を切り出した。 「なあ栗栖、今夜あたり、お前の事を親父に報告しようと思う、親父に呼ばれたら……前に話したように、不慣れなふりをしてくれ」 「わかりました、あの、おやっさんは……本当に俺を誘ってきますかね?」 栗栖は未だに半信半疑な部分があるようだ。 「ああ、俺が頼まれたのは嘘じゃねぇ、親父はお前のナニが気に入ったようだからな」 これが嘘や冗談ならどんだけ助かるか。 「え……、そこっすか?」 「お前の……デカいだろ、だからだ、掘って貰いてぇらしい」 「タチっすか……、俺、昔は受ける側だったんすよ、タチは本当に不慣れです」 栗栖は無理強いされていた時に、受ける側専門だったようだ。 「そうか、だったらちょうどいい、タチは本当に初めてなんだから、初めてのふりをしてりゃ尚更分からねー」 タチ未経験なら願ったり叶ったりで、その方が都合がいい。 「そうっすね、わかりました」 「もし誘われたら……、ま、頑張れ」 「はい」 栗栖には話をした。 屋敷に戻ったら、親父に話をしよう。 数十分して屋敷に着いた。 俺は門の前で降りて、まっすぐに親父の座敷に向かった。 挨拶して中に入ると、親父は座卓の前で新聞を広げて読んでいた。 「失礼します」 一言声をかけ、座卓を挟んで向かい側に座ったら、親父は新聞を畳んで俺を見た。 「圭吾、栗栖の事だな?」 察しがついていたらしい。 「はい、上手くいきましたので、御報告に……」 「そうか、栗栖は今外出中か?」 今報告したばかりだが、親父は早速聞いてくる。 「いえ、リビングにいます」 「呼んで来い、来るように言え」 早速の呼び出し……親父、随分乗り気なようだ。 「はい、わかりました」 頭を下げて返事を返し、座敷を出てリビングに向かった。 リビングに入ったら、栗栖は下っ端の入れた珈琲を飲んでいたが、親父が呼んでいる事を伝えた。 ついでにもう一度念押しも。 栗栖は『はい、そりゃもう、よくわかってます』そう言って、親父の座敷に向かった。 俺は栗栖と入れ替わってソファーに座り、タバコを吹かした。 栗栖は親父の相手をさせられるだろう。 今夜は予定はないと話していたし、親父にとっては好都合だ。 俺は落ち着かない気分でタバコをもみ消したが、栗栖が気になるので、このままここで待つ事にした。 1時間位経っただろうか、何本目かのタバコを消した時、ドアがいきなり開いた。 ノック無しだから、もしや……とは思ったが、案の定親父だった。 パジャマの上にガウンを羽織っている。 「圭吾、お前も来い」 手招きしたが、どうなったのか、成り行きが気になってしょうがない。 「あ、あの~、栗栖は」 「おお、上手くやったぞ」 親父は笑顔で言った。 どうやら、栗栖は上手くタチ役をこなしたようだ。 「そうっすか……」 内心ホッとした。 「お前も混ざれ」 しかし……、さっき手招きして呼んだのは、そういう事だったらしい。 「えっ……、いや」 栗栖をモノにしたばかりなのに、俺を交えて3Pでもするつもりか? 「ふっ、お前ら、どっちも食らってやる」 やっぱりそうだった。 「えぇ……」 最悪な展開だ。 「おやっさん……、今夜は栗栖と楽しんでください、俺は遠慮させて貰います」 なんでもハイハイ言ってたらキリがない。 親父の我儘はどんどんエスカレートしていく。 やんわりと断った。 「馬鹿者、お前は屋敷にいるんだからな、秘密を共有する3人で仲良くやるのが筋だろうが」 どんな筋だよ……って突っ込みたくなったが、そこは抑えて……マジで勘弁して欲しい。 「いや、あの……、部屋住みの奴らもいますし、あんまり派手にやったらバレちまいますよ」 今日はたまたま部屋住みだけだが、警護の為に幹部が泊まりにくる事もある。 部屋住みの連中に知られたら、幹部連中にバレちまうかもしれねぇ。 「ふっ、あいつらにはわしの座敷には近づくなと言ってある、『重要な話をするから、邪魔したらただじゃすまねぇぞ』と脅してあるからな、風呂も先に済ませろと言った、もう風呂を使う奴もいねぇ、圭吾よ、お前とはご無沙汰だ、そろそろやらなきゃな」 ちゃっかり部屋住み連中に命じたようだが、どおりで誰もリビングに来なかったわけだ。 普通なら誰かがうろついてるので、俺がリビングにいたら、気を利かせて飲み物を持ってきたりする。 「そうですか、それはわかりました、ですが……俺は3人は嫌です」 そもそも、俺は3Pなんかしたくない。 ちょっと強気に言った。
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