プロローグ

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プロローグ

 私は美緒。北の果ての地で猟師をしている。かつて自分が狩った熊の毛皮を着て、町で毛皮と獣の肉の行商をしていた。  短い夏が終わり、これからかなり厳しい冬を迎えることになる。毛皮は重宝するのでそれなりの値でうれるし、これから港が氷れば魚が取れなくなるので、肉も良い値で売れた。後は冬に備えて備蓄をするだけだ。  冬眠を迎える動物みたいけど、山の中腹の小屋に住んでいるので、冬は雪に閉ざされてしまう。冬になれば、町に来ることはかなり厳しくなる。食料を手に入れる事がかなり困難になってしまう前にある程度の備蓄が必要なのだ。  町の中を歩いていたら、正面から黒い服を着たいかつい男達が、軍刀をガチャガチャと鳴らしながら、肩で風を切って歩いてくる。  この町の支配者にでもなったつもりなのだろうか。  いけ好かない。  そんな感情しか湧いてこない。  町の皆は彼等に道を譲るかのように避けていくが、私はそんな事はしない。  何故なら……。  真の強い男を知っているかだ!  強い人間は決して驕らない。  真の強さとは、表立って見せびらかしたりするものではない。  あの男の強さは本物だった。  私は残念ながら、あの男と共に過ごした時間は短かったし、幼かったから詳しい素性までは知らない。  けど……。  あの男の強さは本物だった。  それだけは分かる。
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