竜さん

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 今は北の最果ての地で猟師として暮らしているが、かつて私はI藩に仕える武士だった。S藩とT藩による倒幕。盤石だった幕府が崩れ去る。あの時の私達にとっては、考えられない事だった。  新しい時代への動きは一気に加速した。  二つの藩は同盟を結び官軍となり、局地戦で次々と幕府軍を打ち破り、幕府側についたI藩に迫って来ていた。  降伏か全面戦争か、選択を迫られた中、藩主は全面戦争を選んだのだ。  私は幾つかの部隊を率いて、進軍してくる官軍から城を守る役目を授かった。  官軍はE国から支援を受け、近代兵器を揃えているが、我々もF国やD国からの支援を受けている。  兵器では負けていない。  奴らとどう戦うかで勝負が決するだろう。  数では不利な状況にある。陣地を構築して、奴らを迎え撃つ方が得策だろう。  官軍が城を落とすには、小高い山を幾つか突破しなくてはならない。  我々は、城への最短距離となる小高い山に陣取った。  山の中腹の斜面の所に穴を掘り、道のようにしていく。  その道のような穴を段のようにしていき、常に仲間同士が連携を取れるように繋いでいく。更に、弾丸や弾薬を補給できるように、弾薬と弾丸を保管している洞窟のような本部陣地へと繋いでいくのだ。  向こうの言葉では塹壕と言うやつだ。  塹壕を棚田のように構築していき、その塹壕は全て何処かで繋がっていて、仲間同士がどの塹壕にも行き来を可能とし、本部とも常に連絡を取ることが出来、弾丸と弾薬の補給も可能としてあるのだ。  大砲は三台ある。F国からの支援だが、官軍の大砲は最新のアームストロング砲。打ち合っても勝ち目はない。それなら、最初は隠しておいて、突撃をしてきた兵隊に大砲を使う。  基本的な戦術はこんなところだ。  奴らは、最初は大砲で一斉射撃を加えてくるだろう。それはやり過ごして、突撃をしてくるところに猛攻を加える。 私の指示が出るまでは、官軍の奴らに攻撃はしない。その戦略を各部隊に徹底させたのだ。  こちらからは打って出ない。  迎え撃つ。  消耗戦に持ち込んで、相手が疲労してきたら、攻撃に出る。  この戦略で行けるはずだ。  皆の士気もかなり高い。  我々は其々の配置につき、官軍を迎え撃つことにしたのだ。
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