竜さん

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 偵察隊から連絡が入る。  官軍の幾つかの部隊がこの陣地を目指して進軍をしてきていると。  官軍はこの山を一気に突破して、城を攻略する作戦を取っているようだ。  官軍は突撃前に大砲による一斉射撃を加えるだろう。我々が構えるのは山の中腹だが、山の麓の平坦な所と、山頂に偽の陣地を構築しておいた。外から見える所はその二か所になるので、官軍の砲撃はそちらに集中するだろう。  そこは予定通りとなった。官軍の大砲による砲撃は、山の麓と山頂の方に集中した。  偽物の陣地は次々と破壊されていくが、地下に隠れているような状態になっている我々は、大砲の脅威から上手く逃れる事が出来ている。  激しい轟音が響き渡り、辺り一帯は土煙に覆われ、土が雨のように降り注いでくるが、我々は無傷だ。  砲撃による振動こそあっても、塹壕が無事なら問題はない。  官軍の砲撃は数日間続けられた。  霧がやたらと深く立ち込める朝を迎える。  我々は塹壕に兵を揃えた。  偵察隊から官軍が山の麓に陣取ったと連絡が入ったからだ。  偵察隊から再度連絡が入る。  官軍が進軍を開始したとのこと。  一旦、塹壕の中に身を隠す。  奴らが突っ込んでくるまでは一切手を出さない。  しっかりとおびき寄せてからだ。  官軍の奴らが視界に入ってきた。  慎重に進んできている。  少しは警戒をしている感じだが、守備隊がいないと思っている兵もいる感じだ。  まだだ!  もっと近づいて来い。  官軍の連中の顔が識別できるくらいの距離になる。 「撃て!」  一列目の塹壕の兵達が姿を現し、一斉射撃を開始する。  倒れる官軍の兵達。 「二列目、撃て!」  二列目の塹壕の兵達も一斉射撃をする。  バタバタと倒れていく官軍の兵達。 「怯むな!進め!」  官軍の指揮官らしき男の怒号が聞こえてくる。  一列目と二列目の交代による一斉射撃を続ける。  相手は乱れているが、打って出る必要はない。  一斉射撃を加え続け、相手にダメージを与え続けることに専念する。  この距離なら、一人目を貫通した弾丸が次の人間にもダメージを与えることが出来る。  奴らに弾丸の雨を浴びせ続けるのだ。  更に大砲による砲撃を加える。  逃げ出す兵士も出てきたが、官軍は突撃を止めようとしない。  軍刀振りかざし、怒号を出し続ける男がいる。  指揮官だろう。  私は銃を構え、狙いを定めて、引き金を引く。  指揮官らしき男がバッタリと倒れた。  指揮系統が崩れたのか、官軍は慌てふためき退却をしていく。  更に銃撃を加える。  弾丸が到達する距離内にいる兵士には容赦なく銃撃を加える。  一人でも多くの敵を倒す。  官軍の連中が陣地からかなり離れたので、銃撃を止める指示をだした。  官軍の強襲突破は防ぐことは出来た。  これで戦いは終わりではない。次の一手を打たなければ、官軍を退けることは出来ない。
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