惨劇

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 朝の光がやたらと眩しく、開いたばかりの目にチカチカと突き刺さってくる。  身体中を襲う激しい痛み。  それでも無理やり上体を起こす。  変貌してしまった景色が視界に入ってきて、はっきりとしていなかった意識が一気に動き出し、昨日の夜の衝撃が頭の中に駆け込んできた。  私達は獰猛な熊に襲われたのだ。  父、母、弟は!  辺りを慌てて見回す。  立ち上がり、破壊されてしまった家に駆けよる。  声すら出ない……。  父、母、弟は、無惨な状態で倒れていた。  身体には刃物で抉られたような傷が刻まれ、血塗れになっている。  いくら声をかけても、いくら身体を揺すっても、三人が私に反応してくれることは無かった。  三人は死んでしまったのだ。  暫くの沈黙……。  静かな朝の空気を切り裂くかのように泣き叫ぶ。  もはや動くことのない三人に覆いかぶさり、泣き叫び続ける。  涙が枯れ果てるまで。  喉が裂けて声が出なくなるまで。  いや……。  意識が尽き果てるまで……。
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