旅立ち

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旅立ち

 数日分の食べ物を詰めた包と水を竹の筒に入れて、私は竜さんの家を目指す。  皆からは止めるよう言われたけど……。  構うものか。  私は決めた。  竜さんがどんな人か分からないけど、話を聞いてもらうだけでもいいから、会うことにしたのだ。  日が登りだし、明るくなりかけた朝、私は北の集落を目指す。その集落の先にある山の中腹の小屋に竜さんが住んでいると聞いた。  とにかく北の集落を目指す。  どの道をどう進めばよいかは、教えてもらった。  今歩いている道を、ひたすら北に向かって進めばいいだけだ。  一歩一歩しっかりと歩いて行く。  行きつく先にあるのは、希望であることを信じるのだ。  ひたすら歩き続ける北の果てへと続く長い道。  集落は何処にあるのだろう。  ただひたすらと広い荒野の真ん中にある道を歩き続けるのだ。  お日様が真上になってきた。  休憩をすることにした。  道から外れ、草原の岩陰で、水を飲み、おにぎりを頬張る。  両脚が固まってしまったような感覚になり、かなり痛い。  それでも、前に向かってひたすら歩き続けるのだ。  竜さんに会うために!  日が沈み辺りは暗くなる。  道から外れ、物陰を見つける。  ここで一夜を過ごす。  日が登り、明るくなったら、また歩き続ける。  両脚を襲う痛みに耐えるのだ。  歩き続けていれば、そんなものは感じなくなる。  休憩をすると、両脚が石のように固まってしまったような感じになり、激痛に襲われてしまうけど……。  また、歩き始めれば、何とかなる。  繰り返しだ。  ひたすら歩き続けながら、激痛と戦う。  こんな状態が何日も続いた。  身体全体がやたらと重くなってきた。  歩くこと。  いや、立っている事すら辛い。  汗が流れ続け、目の前が霞んでしまう。  それでも、両脚に力を入れて、必死に歩き続ける。  竜さんに会うまでは、決して諦めない。  気持ちで疲労に打ち勝つしかないのだ。  私の想いが届いたのだろうか。  自分が住んでいた集落を出て、何日経ったのか分からないけど、集落が見えてきたのだ。  あそこだ。  間違いない。  歩く速さが一気に速くなっていく。  あの集落の人達は親切かな。水と食べ物を分けてくれるかな。  そんな心配もあったけど、とにかく速足となり、視界に入った集落を目指す事だけに集中した。
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