旅立ち

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 日が登り、私は親切な男性と一緒に集落の北側にある山を登り始める。水と食べ物も貰えた。  一人でこの集落を目指していていた時よりかは、少し心持が楽になっているような気がする。  坂道をひたすら登り続けていく。  平らな荒野を歩いているのとは全く違う。  両脚が速くもプルプルと震えだしてくる。  それでも歩き続けるのだ。  両肩を震わせながら、呼吸も荒くなってくる。  男性が振り向く。 「私が案内出来るのはここまでだ。これから先は一人で行くことになる。大丈夫かい」 「大丈夫です」 「いいかい。この道を歩いて行けば、山小屋がある。そこに竜さんが住んでいる」  男性はそう言うと、山を下りて行った。  私は言われた通りに、木々に挟まれた道を歩き続ける。  途中で休憩をしながら、山を登り続ける。男性の話では、子供でも一日は掛からない所にあるから大丈夫だよとのことだ。  高い木々に囲まれたような状態にあるから、お日様の位置を確認することが難しくて、今が何時なのか分からない。  お腹が空いたら食べ物を口に入れ、水を飲みながら山を登っていくのだ。  両脚がまた痛くなってきた。  構うものか。  竜さんに会うためだ。  この山を登り続けるしかない。  私は一縷の望みと言うロープを必死に掴み、この山を登り続けるのだ。  目の前が少し明るくなる。  少し休もうかな。  左手で近くの木を押すようにして、木に寄りかかり、凭れ掛かる。  水を飲み、明るく感じる方へと視線を持っていく。  そこには山小屋があった。  一気に立ち上がる。  あそこだ。  間違いない。  山小屋を目指し駆け上る。  山小屋の前に立つ。  山小屋の周りは少し開けた感じになっていた。  煙が登っている。  薪でも燃やしているのだろうか。  人がいる事には間違いない。  きっと竜さんだ。  私は小屋の扉の前に立ち、扉を叩く。
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