一曲目 よくある始まり

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 ──ガラガラガラガラ…… 「──やっぱ、安上がりな幌馬車じゃなくて、わたしが言った通りに路銀が尽きようが自動車(クルマ)にするべきだったじゃん!」  わたしは幌馬車の最後部に陣取り後方に視線を固定したまま馬車の前方にいる旅の連れである相方に文句を垂れる。それは何故かというと、 「──おらおら、待ちやがれ! 金目のもの全部置いてけや!!」  現在進行形で盗賊の襲撃に曝されているから。 「──おい! 文句垂れる前に盗賊どもの数を減らせよ!!」 「それなら、ちゃんとやってるよ!」  まったく、いちゃもんはもういっちょ前の相方だ。  わたしは意識を相方から盗賊の方へと戻し、ピンと伸ばした人指し指を盗賊たちの方へと向けると、指の尖端に魔力を集約させて呪文を唱える。  ──凝縮せし光    一条の線となり    貫け! 「凝貫光(レイザ)!」  わたしの指先に集約した魔力が『力ある詞』に反応して変異し、目にも止まらぬ光りを放つ。
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