一曲目 よくある始まり

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「──ガッ!?」 「──グオッ!?」  指先から放たれた光りは追ってくる盗賊たちの足を貫いて、次々と転倒させていく。  しかし、盗賊たちの人数はかなり多くて、数人転ばせて脱落させても人数が減っている気がしない。  っていうか、しつこい!  わたしたちが突然の盗賊の襲撃を受け、そこから直ぐに逃走を開始して早小一時間。  どんだけ体力あんのよ。 「おい、ちまちま足なんかを狙ってねーで、頭とか心の臓があるとこ狙えよ! 後続の連中の中の魔道士くずれが治癒しちまって全然減ってねーじゃねーか!」  お! 成る程、そういワケ。 「道理で盗賊の人数が減った気がしなかったのね」  普通、足をやられては治るまで走ることはほぼ無理。だけど、凝貫光で受けた傷を瞬く間に治せる治癒魔法が使える“魔道士くずれ”がいるならば話は別。そして、上述クラスの治癒魔法はなかなかに習得難易度は高いらしく、そんな治癒魔法を習得できているならば身体強化魔法をも習得できていてもおかしくはない。詰まりは、盗賊たちは身体強化魔法を掛けてもらっているために小一時間も全力疾走しても、わたしたちの追撃が出来ているのだろう。ただ、彼等がかいている汗の量はまるで真夏の炎天下で運動をしたかの如くダラダラ垂らしていて、ハッキリ言ってキモい。  因みに、わたしの相方も身体能力を一時的に底上げしてくれる魔法を使用しているが、馬車を牽きながら全力疾走しても汗一つかいていない。というか、身体能力を底上げする魔法を使っていたとしても馬車を牽きながら全力疾走して汗一つかかないとか、師匠の冒険者としての弟子たちはホント揃いも揃って超人揃いね……。
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