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「わたしを殴った事を後悔するがよい。口外は自由だ。だが……おまえはわたしに《二つの命の手綱》を握られていると言う事を、ゆめゆめ忘れるでないぞ」
勝ち誇ったような彼の口調は、レオヴァルトの怒りを逆撫でするものだ。
レイモンド卿に背を向けたまま立ち止まったその刹那、レオヴァルトは形良い眉をこれでもかと歪めた。
──私とて、こんな暴挙を甘んじて許すものか。あまつさえここは救いを求める者を擁護するはずの教会じゃないか。護るどころかこんな形で傷つけ、痛めつける行為を見捨てておけるはずがない。だが今は、ユフィリアの傷をどうにかするのが先だ……!
湧き上がる怒りを腹の奥に押しやりながら肩越しに目を向け、レオヴァルトが地を這うような低い声色で宣言する。
「貴様こそ覚えておけ。ユフィリアは私の妻になる人だ。貴様は勿論、もう誰にも指一本触れさせはしない」
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