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「レオヴァルト様っ、落ち着いてください、すぐに治療を始めますから」
「落ち着けるわけないだろう、傷が……ユフィリアの、背中が……」
「心配なのはわかりますが、まずは寝台に寝かせてくださいますか?」
「……は?! ああ……そうだな、すまない……」
いつも不機嫌そうな顔をしていて、他人を寄せ付けようとしないオーラしか放っていないこの黒騎士が、目を疑いたくなるほど慌てている。
それほどユフィリアを案じているのだと思うと、グレースの頬がおのずと緩んだ。
傷ついた背中を上にして、華奢な身体を寝台の上に注意深く下ろす。
腕にべっとりと付着した血糊に狼狽えてしまうレオヴァルトは、そんな自分に戸惑ってもいた。
──この程度の流血が命に関わるものじゃないと知っている。なのに、これほど焦るのは……。私はいったい、どうしてしまったんだ……?
何度も振るわれた鞭によって聖衣が切り裂かれ、筋状に紅くただれた皮膚からじわじわと血液が滲み出ている。
「治癒を始めますね。そんなに時間はかからないと思います。私、今日は非番でグラシア満タンなので!」
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