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言いながらも、グレースが翳した両手のひらからすでに神聖力が放たれており、傷ついたユフィリアの背中を白々とした光で満たしていった。
「これが、グラシアの加護か」
聖女の治癒を間近で見たのはレオヴァルトも初めてだ。
煌めく光の粒が肉眼でもしっかりと見え、それらが吸い込まれるように傷口に浸透していく。
滲んだ血液はそのままに、壊れた皮膚の細胞がじわじわと再生していく様子には目を見張るものがあった。
「私は下級聖女ですから治癒力弱いですが、筆頭聖女イザベラ様のものともなれば、このくらいの傷なら数分あれば完全に治ってしまいます。まぁ……イザベラ様が協力してくれるとは思えないですけどっ」
──ユフィは否定していたけど、レオヴァルト様はやっぱり、ユフィのこと……。
ユフィリアは気を失っているようだ。
背中の傷は順調に治癒できている。なのに終焉を迎えた世界の再生をハラハラと見守るようなレオヴァルトの、甘やかなこの視線は。
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