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──生意気で強がりな聖女の願い……か。
『いかがわしいのは誰なのよ、このエロ黒騎士!』
むすっと頬を膨らませてそっぽを向く愛らしい顔を思い出すと、頬が緩んだ。
「こんなふうに弱ってる姿なんか見せられたら」
小さく呟かれた言葉にグレースが反応する。
「何か言いました?」
「……いや」
レオヴァルトは寝台に腰掛けると腕を伸ばして、汗で張り付いたユフィリアの前髪を額からそっと剥がしてやる。
突然ふれた指先に驚いたのか、血の気を失った額がぴくんと揺れた。
──自由を求める籠の中の小鳥。
君の願いも、必ず叶える。
そのためには早急にユフィリアと成婚式を挙げて神聖力の強大化を認めさせ、レイモンド卿に従者たちを解放させる。
そんな想いが、レオヴァルトの胸の中を満たしていた。
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