第2章 戦利品となった身の上。

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第2章 戦利品となった身の上。

曹操と曹丕にその身を狙われている 甄貴ではありましたが… 甄貴『身体は離れていても私の心は我が君と共にある。それに…』 物理的に身体は離れていても 想い合う2人に心の距離などなく… お腹を撫でながら袁熙との間に宿った 大切な宝物を慈しんでおりました。 袁尚「もうすぐ7ヶ月となりますから お腹が大きくなりましたね。義姉上」 袁尚は19歳となりましたが、 甘えんぼな性格が災いし嫁の来てなど期待出来るものではなく… 劉鳶「7ヶ月ともなれば…お腹も大きくなります。全く…19歳にもなって困った子ですね…」 劉鳶もあきれ果てておりました。    甄貴「顕甫様は素直な方ですから 私は義姉となれた事に喜びを感じておりますよ。」 袁尚は優しい甄貴の言葉に救われ 目を輝かせておりました。 しかし… 袁尚と劉鳶、それに甄貴の奇妙過ぎる同居生活は突然終わりを告げました。 それは… 曹丕「…お前は誰だ?」 鄴城へ単身乗り込んで来た細身で美形な若い男に…。 劉鳶「私の名前は劉…字は明琳です。」 目の色を変えてすり寄っていたのは、 曹操とそれほど年齢の変わらぬ劉鳶。 これには… 袁尚「母上…。父上が黄泉路を逆走なさったら如何するのですか?見るからに私や義姉上よりも年下ですよ?」 甄貴は21歳、 袁熙は同じく21歳。 袁尚は19歳。 曹丕「私の年齢は17歳だ。 しかし…それに何か不都合でもあるのか?…そんな事よりも腹の大きい女・そなたは一体誰だ?」 曹丕の瞳に映るのはただ1人。 袁熙の子を宿す甄貴でした。 甄貴「私の名前は甄桜綾(ヨウリン)。袁小龍様の妻で御覧の通り夫との子をこの腹に宿しておりまする…」 それを聞いた曹丕は… と、言うより聞いているのか聞いてないのか定かではありませんでした。 何故ならば… 甄貴「…何をなさるのです!」 曹丕は甄貴を突然お姫様抱っこして鄴城から連れ出そうとしたからです。 曹丕「滅び逝く袁家と共に生きて腹の中にいる子を育てられるとでも…?」 曹丕の言葉には説得力があり… さすがの甄貴も逆らう事が 出来なくなりました。 甄貴「我が君は誰よりも家族を愛しておられた方ですので顕甫様とお義母様を幽州へ逃がして下さるならば…この身は貴方が望むようにして下さって構いませぬ…」 劉鳶と袁尚は甄貴の願いを聞き届けた曹丕により袁熙がいる幽州へと逃げる事を許されたのでございます。 袁尚「義姉上様、兄上にはどれ程義姉上が兄上をお慕いしておられたか…きちんと説明しておきますね。」 劉鳶「あなたが説明せずとも熙ならば分かるでしょう…。あなたが説明するから事態がややこしくなるのよ…!」 審配「…お2人とも参りますぞ…?」 審配…袁紹の時代から袁家に仕える忠臣で官渡の戦いの際、曹操軍の捕虜となったものの甄貴の願いにより袁尚と劉鳶が無事に幽州へ行けるよう道案内をする事になりました。 こうして甄貴は共に行きたい気持ちを胸にしまい込み袁尚と劉鳶、それに…審配が向かう方角を見つめていました 甄貴『きっとあの方角には…我が君がいらっしゃる…。身体は離れていても私の心はずっと我が君のものです。』 曹丕にお姫様抱っこされながらも… 甄貴は心の中で袁熙の心へ届くように自らの想いを呟いておりました。 曹丕「桜綾、これから父上の元へ挨拶に行くからそなたもそのつもりで…」 曹丕は甄貴の身体をゆっくりと地に降ろすとその手を引いたまま曹操の元へと向かいました。 曹操「…子桓、 その娘が傾国の美女・甄氏か?」 恋多き男・曹操は 目の奥をギラギラさせておりましたが 夏侯淵「へぇ…。でもうちの妻には負けるなぁ…。なんて言っていたら静麗に逢いたくなりましたよ。殿、さっさと後片付けして帰りますよ?」 愛妻家である夏侯淵は主君の息子の嫁には全く興味がないようで… 曹操「…ふむ、そうだな。子桓よ、甄氏を妻にしたいならばすれば良い。息子と女を取り合う程儂は落ちぶれてはおらぬからな…」 曹操は2人の関係を認めると、 夏侯淵と共に陣の後片付けに精を出しておりました。 こうして甄貴は曹丕の正妃となりましたが曹丕は袁熙との間に宿った甄貴の腹に宿る子の存在を近くに感じたくないようで曹操達と共に許都に帰る事を選びました。 曹丕「気が向いたら鄴城にまた戻る故私が来るまで1人でここにおるが良い。」 甄貴「畏まりました。」 曹丕達が鄴城を去ると甄貴は強制的に離縁させられた袁熙を想いながら… 甄貴「…我が君…」
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