Angie

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オレのことを、何をするのか知らずに邪魔してるのかと思っていたら、知ってたのか? 「飲まなきゃダメだろっ」 だから離せ。 「いいよ。別に出来てたら結婚すればいいだけじゃん」 その言葉にオレはかっとなる。 「ふざけるな。やる方はいいけど、被害被るのはこっちなんだよ。しかもそんな無責任発言、冗談でもするんじゃねぇ」 イライラする。 何が結婚だよ。 するつもりなんてさらさらないくせに。 オレは湧き上がる怒りに、そいつの腕を力を込めて叩いた。 なのに全く動じないその男は腕の力も緩めない。 「大体さぁ、出来る可能性あるの?女の子じゃないから、そこんところ自分がよく分かってるでしょ?」 そうのんびり言うと、オレの首元に顔を埋めた。完全に寝る体勢だ。だけど腕は緩まない。 そんな男の言葉に、オレは悔しいが冷静になる。確かに妊娠の可能性は低い・・・というかほぼない。 オレがさっきから必死に飲もうとしているのはアフターピルだ。今までこういうことに縁がなく、清い身体のままここまで来たけど、人生何が起こるか分からない。そう思って常に財布に入れてあるアフターピルを飲もうとしていたのだけど、考えてみればこの男の言う通り、できる可能性がない事はオレがよく分かっている。 先月発情期は終わったばかりだし、オレの発情周期は滅多に狂わない。たとえその滅多に起こらないことが起きたとしても、2ヶ月も早くに来るわけがない。 という事で、飲まなくても大丈夫だろう。それに万が一の万が一で出来たとしても、おそらく初めにしてから半日以上は過ぎている。そうなると飲んだところで効く確率は低い。 だけどさ。 人生初のアルファとのエッチで、あんなに溢れるほど中に出されたら、誰だって焦るよな。 だって初めてなんだよ? なのに起きたら精でお腹の中いっぱいになってて、さらに追い打ちをかけるように何度もされたら、そりゃびびるだろ? だけど、落ち着いて考えたら妊娠なんてするわけがなかった。 そう思ったら途端に眠気がオレを襲い、そのまま寝てしまう。 男の腕の中は温かくて、ぎゅっと抱きしめられた感じがすごく落ち着くんだ。それに規則正しい心音と寝息、それに何よりその香りが心地いい。 だけど今になって思う。 この男は誰? 全く知らない男と、全く知らない場所で、今まで全く知らなかったことをたくさんしてしまった。 なのにその疑問を追求しようと思った時には、オレは深い眠りの底に落ちていた。 それからどれだけ寝ていたのか、目が覚めると部屋には間接照明だけが灯っていた。窓の外を見ると既に日が落ち、どっぷり夜が更けている。 一瞬自分の状況を見失うも、すぐに思い出し周りを見渡す。 あの男がいない。 とりあえずベッドの上にはおらず、見える範囲にもいない。耳を澄ましてみても、誰かがいる気配はなかった。そう言えば夢現の中で、あの男の声を聞いた気がする。 「ちょっと仕事してくるから、このまま大人しく寝ててね」 あれは夢ではなくて、現実? こんな時間から仕事だなんて、夜の仕事でもしているのだろうか。あの容姿ならきっとホストだろう。あれだけの美貌をもっていたら、ナンバーワンのホストと言われてもおかしくは無い。 そう思うとこの部屋も納得だ。 有り得ないくらいの高さから見える東京の夜景から、ここがタワマンのかなり上階であることが分かる。それに中の広さも考えたら、あの若さで住めるはずがない。 きっとどこぞのナンバーワンホストなんだな。 そう思ってオレはひとり納得する。そしてオレは起き上がり、ベッドから降りた。 情けないくらい足ががくがくして、おしりはまだなにか入っているみたいに違和感がある。何より腰が痛い・・・。 それでもオレは床にちらばった衣服を拾って身につけ始める。 誰が大人しく寝てるか。 オレは身支度を整えると、そうそうにこのマンションを後にした。鍵のことは気になったけど、こんな高級マンション、オートロックに違いないと、オレはそのまま出てきた。まあ、出たあと確認したらちゃんとロックされていたので大丈夫だろう。
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